2025年03月18日 12:00
子どもとママにとって、授乳の時間は親子の温もりを感じながら絆を深めていく貴重な時間です。しかし、授乳の時間も子どもの成長や家庭生活を考慮しながら、徐々に減らしていく必要があります。その際に「卒乳はいつ始めたらいい?」「どのように進めるの?」と悩むことも少なくありません。 卒乳の時期や方法は、子どもの成長過程を考慮しながら無理なく進めていくことが大切です。そのため、事前に卒乳を始める適切な時期やしかた、卒乳後の育児スタイルについて理解しておきましょう。 今回は、いろいろな卒乳のしかたや特徴、卒乳後の育児スタイルに至るまで詳しく解説します。
卒乳は、子どもの成長によって適切な時期が異なることや、一般的に広く知られている「断乳」とも異なった意味合いを持ちます。そのため、卒乳を始める前に基本的な知識を理解しておきましょう。
ここでは、卒乳を始める前に知っておきたい基礎知識や卒乳と断乳の違いについて解説します。
卒乳とは、子どもが母乳を必要としなくなり、自然に飲まなくなることを指します。
卒乳は、子どもの成長に寄り添いながら自然に母乳をやめる方法ですが、子どものペースに合わせて進めていくため、時間を要します。しかし、子どもにとってストレスが少ない方法であるといえるでしょう。
母乳は子どもにとって栄養源であると同時に、安心感を得るための大切な存在です。そのため、卒乳のタイミングや進め方については、子どもの成長や気持ちに寄り添い、余裕を持って進める必要があります。
母乳をやめるタイミングを考える際に、「卒乳」と「断乳」という言葉を耳にすることがあるでしょう。一見似ているようですが、それぞれの意味や進め方は異なります。卒乳は子どもの成長に任せて自然に母乳をやめる方法ですが、断乳はママの判断で計画的に母乳を終えることを指します。
断乳は、一般的にママの仕事復帰や体調の変化など、さまざまな事情で母乳をやめる必要がある場合に選ばれる方法です。卒乳よりも短期間で母乳を卒業できるメリットがある一方、赤ちゃんが不安を感じやすいともいえます。そのため断乳をすると決めたら、急にやめることは避け、少しずつ授乳の回数を減らしながら進めましょう。
卒乳も断乳も母乳をやめるという点では同じですが、どちらの方法を選ぶ場合でも、意味や進め方の違いを理解し、子どもの成長や気持ち、ライフスタイルを考慮しながら無理なく進めてください。
卒乳の適切な時期は個人差があるため、一概に「〇歳になったら卒乳しなければならない」という決まりはありません。
卒乳を始める一般的な目安は、離乳食が順調に進み、食事から十分な栄養を摂れるようになった頃です。1日3回の食事をしっかり食べ、母乳やミルクに頼らなくても成長できるようになったら卒乳を始めてもよいでしょう。
また、子どもの精神的な安定も、卒乳を始める際には重要なポイントです。環境の変化に敏感な時期や夜泣きが頻繁な時期に卒乳を進めると、かえって卒乳までに時間がかかることもあります。引っ越しや保育園の入園など、生活環境が大きく変わるタイミングと重ならないようにすることも、卒乳を進めるうえでは大切です。
さらに、卒乳のタイミングは、ママの体調やライフスタイルとも関係があります。特に母乳を与えることが体力的に厳しくなっている場合は、ママ自身の健康を優先することも考慮してください。
卒乳にはいろいろなしかたがありますが、スムーズな卒乳を迎えるためには、子どもの成長や家庭の状況に合わせて進めていく必要があります。急に母乳をやめるのではなく、段階的に進めることで、子どもは安心して卒乳を迎えることができるでしょう。
ここでは、いろいろな卒乳のしかたやスケジュールの立て方について解説します。
卒乳の進め方は、子どもの個性や家庭の状況によってさまざまです。主な卒乳のしかたとしては、「自然卒乳」「計画的な卒乳」が挙げられます。
まず、自然卒乳は、子どもが自ら母乳を欲しがらなくなるまで待つ方法です。
徐々に食事の量が増え、興味が母乳以外のものに移ることで、自然と授乳回数が減っていきます。ママにとってはストレスが軽減され、子どものペースに合わせられる点がメリットですが、いつ卒乳するかの予測が難しく、長期間を要することもあるでしょう。
また、計画的な卒乳は、スケジュールを立てて少しずつ授乳を減らしていく方法です。
一般的に日中の授乳回数を減らして寝る前の授乳を最後に残すなど、段階的に進めていきます。この方法は、ママにとって乳房の張りなどの体調トラブルを軽減できる利点があります。ただし、途中で子どもが不安を感じることもあるため、スキンシップを増やしながら進めていくようにしましょう。
卒乳には個人差があり、すぐに終わる子もいれば、時間をかけてゆっくりと進める子もいます。子どもの様子を見ながら、無理のないペースで段階的に進めていくことを心がけてください。
まず、最初のステップとして、日中の授乳回数を減らすことから始めましょう。例えば、昼間の授乳を少しずつ減らし、おやつや水分補給を取り入れながら母乳なしでも過ごせる時間を増やしていきます。
子どもが慣れてきたら、次は寝る前の授乳を減らすことを目標にするとよいでしょう。寝かしつけの方法を変え、絵本を読んだり、手をつないだりすることで、授乳なしでも安心できる習慣をつくっていくことがポイントです。
さらに、卒乳が近づいてきたら、授乳の回数を週ごとに減らしながら進めてください。例えば、最初の1週間は日中の授乳を1回減らし、次の週はさらにもう1回減らすというように、徐々に回数を減らしていくと子どもも慣れやすいでしょう。いよいよ完全に授乳をやめる最終段階では、夜間の授乳も控えていきます。
卒乳のスケジュールはあくまで目安であり、子どもの様子によって柔軟に調整してください。予定通りに進まないこともありますが、焦らずに進めましょう。
卒乳が進み、子どもが食事や水分補給をしっかりとできるようになると、徐々に母乳を求める回数が減っていきます。例えば、お腹が空いているときには母乳ではなく離乳食を優先し、食事の満足度を高める工夫をすることで自然と授乳の回数が減っていくでしょう。
また、授乳以外の方法で子どもの気を引くことも一つの方法です。お散歩に出かけたり、一緒に遊んだりすることで、母乳なしでも安心して過ごせる時間を増やしていきます。子どもが母乳を求めたときは、抱っこや言葉がけで気持ちを落ち着かせるなど、授乳以外のスキンシップを増やすことで子どもの不安が軽減され、自然な形で卒乳を迎えることができるでしょう。
卒乳に向けたスケジュールが順調に進まない場合でも、子どもと楽しめる時間など授乳以外のことにも意識を向け、ママ自身もリラックスした気持ちで取り組んでください。卒乳のしかたで何よりも大切なことは、決して焦らず、子どもとママが心穏やかに過ごせる環境づくりなのです。
卒乳は、子どもとママの状況によって柔軟に進めていく必要があるため、予定通りに進むとは限りません。中でも卒乳の過程で起こりやすいトラブルを事前に知っておくことで、負担を軽減できるでしょう。
ここでは、卒乳時に起こりやすいトラブルとその対処法を解説します。
卒乳を進めるうえで、子どもが母乳を求め続ける背景には、さまざまな心理的要因が関係しています。
まず考えられるのは、「母乳が安心材料になっている」ことです。
子どもにとって授乳の時間は、ただお腹を満たすだけでなく、ママの温もりを感じる大切なひとときでもあります。特に眠る前や機嫌が悪いときに母乳を求める場合は、安心感を求めていることが多いでしょう。
また、「環境の変化によるストレス」も卒乳を妨げる要因の一つです。
例えば、保育園に通い始めた、引っ越しをした、家族が増えたなどの変化があると、子どもは不安を感じやすくなります。その結果、いつも以上にママに甘えたくなり、授乳の回数が増えることもあるでしょう。
子どもは成長とともに自立心が芽生え、少しずつ母乳以外の方法でも安心感が持てるようになりますが、その過程には個人差があります。卒乳を進めるにあたって子どもが落ち着かなかったり、不安を感じているときには、授乳以外のスキンシップを増やしたり、環境の変化に配慮しながら子どもの気持ちに寄り添うことを心がけましょう。
卒乳では授乳の回数を減らすことで、乳腺に残った母乳が排出されにくくなり、多くのママたちが乳房の張りや痛みを感じることがあるでしょう。さらに乳房に溜まった母乳が炎症を引き起こし、乳腺炎になることもあります。
卒乳の際、乳房に張りや痛みを感じた場合は、少しずつ母乳を絞り、圧抜きをするようにしてください。一度に搾乳をし過ぎると、体が「まだ母乳が必要」と判断し、かえって分泌を促してしまうことがあります。痛みが強いときは軽くマッサージをしながら、張りが和らぐ程度に留めるようにしましょう。
また、痛みが続く場合は、冷やして炎症をおさえる方法も効果的です。冷却シートや冷たいタオルを使って冷やすことで、症状が緩和されるでしょう。ただし、発熱や強い痛みを伴う場合は自己判断をせず、早めに医師に相談してください。適切な対処をすることで、悪化を防ぐことができるでしょう。
授乳中はホルモンが活発に分泌されるため、母乳の生成を促すだけでなく、リラックス効果も促進されます。しかし、卒乳に伴い、授乳の回数が減ることでホルモンの分泌が減少すると、気分の浮き沈みが激しくなったり、不安を感じやすくなったりするでしょう。
特に、突然の情緒不安定やイライラを感じることは珍しくありません。「なぜこんなに気持ちが不安定なの?」と戸惑うママも多いことでしょう。こうした変化は、ホルモンバランスが整うまでの一時的なものですが、どうしても辛い場合はママだけで抱え込まず、家族や周囲に気持ちを伝えることで気持ちが楽になります。
また、精神的不安を和らげるためには、リラックスできる時間を意識的につくるのも効果的です。好きな音楽を聴いたり、軽いストレッチをしたりするだけでも気分転換になります。
卒乳によるホルモンバランスの変化は、決してネガティブなものではなく、新しいステージへ移行するための自然な過程です。気持ちの落ち込みが続く場合は無理をせず、助産師や専門家に相談することも検討しましょう。
卒乳は、子どもが次の成長段階へ進む大切な節目です。それと同時にママにとっても新たな子育てが始まるタイミングともいえます。卒乳後は、子どもとの関わり方や生活リズムにも変化が生じるため、余裕を持って子育てを行えるように、心がけておくべきポイントをおさえておきましょう。
ここでは、卒乳後の子育てに向けて、ママが心がけておきたいことを解説します。
まず、卒乳後に子どもの変化として挙げられるのは、精神的な自立が少しずつ進むことです。その際に、これまで授乳を通じて得ていた安心感を他の方法で補おうとするようになり、抱っこやスキンシップを求める頻度が増えることもあるでしょう。
また、ママ自身にも変化が訪れます。授乳の時間がなくなることで、これまで頻繁に感じていた身体的な負担が軽減されていきます。その一方で、「授乳がなくなったことで子どもとのつながりが減ってしまった」と寂しさを感じることもあるでしょう。
しかし、授乳以外にも親子の絆を深める方法はあります。抱っこをしたり、目を合わせて話しかけたり、一緒に遊んだりする時間を意識的に増やすことで、子どもは少しずつ変わらぬ愛情を感じ取ることができるのです。お互いの変化を受け入れながら、子どもと笑顔で過ごせる時間を積極的につくっていきましょう。
卒乳後の新たな育児スタイルの確立に向けて、まず意識したいことは、子どもとのスキンシップの時間を積極的に取り入れることです。授乳がなくなることで、子どもは無意識にママとのふれあいが減る寂しさを感じることがあります。抱っこや手をつないで遊ぶスキンシップを大切にしながら、言葉や表情でも愛情を伝えるようにしましょう。
また、生活リズムを整えることも大切です。授乳の時間がなくなることで、食事のタイミングや就寝時間にも変化が生じてきます。朝起きる時間、食事の時間、お昼寝の時間など、一日の流れをできるだけ一定に保つことで、子どもは少しずつ新しいリズムに慣れていくでしょう。
卒乳はゴールではなく、新たな育児生活への入り口です。子どもの成長を見守り、無理のないペースで新しい育児スタイルを確立していきましょう。
卒乳は、子どもの成長にとって大きな一歩であり、ママにとっても新たな育児生活の始まりです。その進め方は一つではなく、子どもによってタイミングや方法が異なります。この記事を参考にして、焦らずに親子のペースを大切にしながら、無理のない方法を実践してください。
育児をするうえで大切なことは、子どもと向き合いながら、少しずつ前に進んでいくことです。卒乳は一つの節目ですが、その先にもたくさんの成長の瞬間が待っています。今後も子どもの成長を楽しみに、育児に取り組んでいきましょう。
ライター名: Masayo.M
修士(教育学)
熊本大学大学院教育学研究科 修士課程 修了
保育者として保育園をはじめ、幼稚園や認定こども園において15年以上の勤務経験があります。
子育て世代のママに向けて、笑顔や価値につながる記事執筆を心がけています。
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