2021年10月01日 00:00
母子手帳にも記載されている「成長曲線」は、定期的に記録していくことで、子どもの病気や成長異常を発見し、早めに対処することができる優れたものです。今回は、そんな成長曲線の正しい見方や相談するタイミングをご紹介します。
まずは、成長曲線の正しい見方を確認しましょう。何気なく使用している成長曲線ですが、正確な描き方を知っている人は少ないかもしれません。子どもの健康状態をきちんと把握するために、次の3つの点に気を付けて記録してみてください。
成長曲線にポイントを打つ際は、月齢や日齢まで正確に合わせましょう。成長曲線は一般的に、0~1歳までは1カ月ごと、1歳以降は1年ごとに区切られています。多くの方は、区切られた線上にポイントを打つでしょう。しかし、これだと正確な曲線は描けません。
たとえば、1歳4カ月の子どもの場合。ポイントを打つのは、1歳の線上ではなく、1歳と2歳の間の真ん中よりも少し1歳寄りです。0歳2カ月5日の子どもであれば、2カ月の線上よりも少しだけ右にずらしてポイントを打つとよいでしょう。
成長曲線は「曲線」と名がついているため、点ではなく線で見てください。子どもの成長は個人差が大きく、身長や体重がぐっと伸びるタイミングもそれぞれ異なります。体調によっては、成長度合いが変化することもあるでしょう。
点だけで見ると、成長曲線を外れることもあり、保護者の方としては不安も大きいでしょう。しかし、線をつないで曲線で見てみれば、心配のない場合もあります。逆に、成長曲線の中に納まっていても、曲線が不自然な場合は注意が必要です。その時だけで一喜一憂するのではなく、定期的に子どもの身長・体重をチェックして曲線を描いていくようにしましょう。
成長曲線は、男女で異なります。これは、性別によって成長スピードやタイミングが異なるからです。
1歳0カ月~1カ月未満の身長の中央値(成長曲線の帯の真ん中)を見比べてみると、男児は74.8cm、女児は73.4cmで、1cm以上差があることがわかります※。乳幼児期における身長1cmの差は大きく、健康状態を把握する際にもズレが生じる可能性があるでしょう。
※厚生労働省「乳幼児身体発達調査」の表2参照
正確に発達状況を記録するためにも、成長曲線の性別は間違えないようにしてください。基本的には、男児は水色、女児はピンク色のグラフになっています。
子どもの成長を記録したら、その都度成長曲線と見比べてみましょう。定期的にチェックし、気になる点があれば相談することが大切です。それでは、どのような場合に相談すればよいのかをご紹介します。
成長曲線は、成長を確かめるだけではなく、成長に異常がないかを知るきっかけにもなります。「成長している、していない」と思うだけで終わりにせず、子どもが健康かどうかまでをセットにして考えましょう。
気になることがあれば、出産した産院や予防接種などで通院している病院に相談してみてください。また、子どもの定期健診の際、保健師さんに相談してみるのもよいでしょう。
相談する際の判断基準は、「成長曲線の帯から大きく外れた場合」です。少しなら問題ないことも多いですが、あまりに大きく外れる場合は成長異常や病気の可能性もあります。上でも下でも、帯から外れた場合は注意してみてください。
ただ、正確にポイントが打てていない可能性もあります。その場合は、「SDスコア」を確認してみるとよいでしょう。SDスコアは、平均値からどのくらい離れているかを表すものです。-2SDから+2SDまでが標準的な成長の範囲内とされており、身長の場合は-2SD以下になると成長障害の疑いがあるといわれています。グラフにSDスコアが記載されている成長曲線もあるので、参考にしてみるとよいでしょう。
ちなみにSDスコアは、自分で計算することもできます。
計算式は、「SDスコア=(身長の実測値-平均身長)÷SD」です。平均身長やSDは、厚生労働省の「国民調査・栄養調査」や、「乳幼児身体発育調査」、その他多くの小児科のHPなどに掲載されています。
成長曲線の帯内に入っていても、曲線が不自然であれば注意が必要です。曲線は、ゆるやかに右肩上がりになるのが一般的ですが、急激に伸びが悪くなったり良くなったりすると、鋭角に曲がるなど不自然な線になります。
病気や成長異常は、どのタイミングで起きるかわかりません。生後しばらく問題がなくても、年齢が上がってから異常が見つかる可能性もあります。子どもの健康状態を正しくチェックし、なるべく早く対処するためには、定期的に成長曲線を記録していく必要があるのです。
成長曲線は、成長異常や病気を早期に発見してくれるものです。ただ、気にし過ぎてストレスを溜めてしまうのはよくありません。「成長曲線から外れているから」と、子どもに過剰に食事を与えようとするのも危険です。子どもの成長を正しく見守るためには、成長曲線の見方だけでなく、どのようにできたものなのかも知る必要があります。
成長曲線は、過去の子どもたちの記録をまとめたデータのようなものです。多くのデータから平均値を求めた統計表示法になります。
1歳0カ月の子どもが全員で100人だと仮定し、身長順に並べたとしましょう。この時に真ん中にくる子どもの身長が50パーセンタイルで中央値となり、成長曲線の帯の真ん中になります。つまり、この値よりも下の子どもが50人、上の子どもが50人いるということです。
そして成長曲線は、3パーセンタイルから97パーセンタイルを標準としています。つまり、前から3番目までと後ろから3番目までの6人の子どもは成長曲線の帯内に入らないということ。割合でいえば、帯内に入るのは94%で、残り6%の子どもは入らないということになります。
成長曲線の成り立ちを考えれば、平均値を目指すことに意味はないことがわかるはずです。身長や体重順で並べば、小さい子どもも大きい子どももいます。それでも、一番前や一番後ろになる子どもたちすべてが、成長異常や病気なわけではありません。
つまり、成長曲線の帯から外れていても、必ず異常があるわけではないということ。成長曲線の動きに沿って身長や体重が伸びていれば、基本的には問題ないことが多いです。もちろん、病気が隠れている可能性も否定できないため、相談する必要はあるでしょう。そのうえで、その子どもなりに成長しているかを見守っていくことが大切です。
子どもの健康状態を把握するために、成長曲線を記録してみましょう。ただ、心配し過ぎてストレスになってしまうのはよくないため、成長曲線の見方や成り立ちを理解し、正しく記録していくことが大事です。今回の内容を踏まえ、まずは母子手帳を開いてみてください。
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