2021年06月13日 00:00
妊婦健診では、体重を測定しますよね。妊娠中のママの健康と赤ちゃんの健やかな成長のために、体重管理は重要です。出産経験のある方から「かかりつけ医に体重を厳しく指導された」と耳にし、体重管理ができるか不安に思っているママがいるかもしれません。体重増加の目安は、個人で異なります。今回は、妊娠中の体重管理について解説します。
妊娠中の体重管理の基準となるのは、妊娠前の体重から算出するBMI(体格指数)です。健康診断ではBMIの項目があるため、気にして見ている方もいるのではないでしょうか。
BMIは「Body Mass Index」の略で、低体重や肥満の判定に用いられます。国際的な基準であり、標準体重のBMIは22です。標準体重の人は、ほかの体重の人に比べて病気になりにくい状態であるといわれています。
厚生労働省は2006年に、「妊産婦のための食生活指針」を公表しました。その中に、BMIの区分別の推奨体重増加量の目安がまとめられています。
妊娠中の望ましい体重増加量を知るために、まず妊娠前の体重からBMIを計算してみましょう。BMIの式は以下の通りです。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
計算するときに気を付けたいのは、身長の単位は「cm」ではなく「m」であることです。BMIの値によって、低体重(やせ)、普通、肥満と判定されます。
BMIの判定
・低体重(やせ):18.5未満
・普通:18.5以上~25.0未満
・肥満(1度):25.0以上~30.0未満
・肥満(2度以上):30.0以上
では、一例として、身長160cm、体重50kgの人のBMIを計算してみましょう。
式) 50(kg)÷1.6(m)÷1.6(m)=19.5
以上の計算からBMIは19.5となり、体格は普通と判定されます。
ちなみに、身長160cmの人の標準体重は56.3kgです。
厚生労働省の「妊産婦のための食生活指針」によって示された、妊娠中の体重増加の目安は以下の通りです。妊娠前のBMIを基準にしています。
妊娠全期間を通しての推奨体重増加量
・低体重(やせ):9~12kg
・普通:7~12kg
・肥満(1度以上):個別対応
体重増加量を見ると、BMIが普通の場合は、低体重よりも幅が大きいことがわかります。これは、BMIが「普通」でも、「低体重(やせ)」の値に近いなら、上限の12kgに近い範囲を推奨しているからです。反対にBMIが「普通」でも「肥満」に近い値の場合、下限の7kgが目安となります。
BMIが25.0をやや超える肥満の場合は、約5kgの増加を目安とするとされています。そのほかの肥満の場合は、個別対応が行われるため、かかりつけ医の指導に合わせましょう。
妊娠中期以降では、1週間あたりの推奨体重増加量も示されています。
妊娠中期以降の1週間あたりの推奨体重増加量
・低体重(やせ):0.3~0.5kg
・普通:0.3~0.5kg
・肥満(1度以上):個別対応
お腹の赤ちゃんが小さい妊娠初期は、推奨体重増加量の目安はありません。つわりがある時期で食事が摂れない方もいることから、妊娠初期の体重は個別対応が望ましいとされています。
つわりによって体重が減ってしまった場合は、どのくらいの体重を目指したら良いのか、かかりつけ医に相談すると安心です。
なお、2021年3月に日本産婦人科学会から、妊娠中の増やすべき体重について新たな指標が発表されました。これは、厚生労働省の「妊産婦のための食生活指針」とは異なり、BMIの区分を4つに分けています。
妊娠中の体重増加指導の目安
・低体重(やせ):12~15kg
・普通:10~13kg
・肥満(1度):7~10kg
・肥満(2度以上):個別対応(上限5kgまでが目安)
厚生労働省の「妊産婦のための食生活指針」と比べると、体重増加量が多いことが分かります。さらに、体重増加量を厳密に指導する必要はないとし、個人差を考慮するとしています。今後、母子手帳に記載がされるそうですが、2021年3月の時点では、いつから反映されるかは不明です。
なぜ、体重増加の見直しが行われたのでしょうか。日本では数年前から、BMIが低体重の女性の割合が増えている傾向が指摘されています。また、体重2,500g未満の低出生体重児が増えていることもあり、体重増加量の見直しが行われたようです。
赤ちゃんが生まれるときの体重は、平均で3,000gくらいです。しかし、妊娠中のママの体重増加の目安は10kg前後。体重増加量をみると赤ちゃんの体重以外に、何が増えるのか気になるママもいるかもしれません。
妊娠週数が進むにつれて、赤ちゃんに栄養を与える胎盤が作られ、赤ちゃんの体を守る羊水が増えていきます。さらに、ホルモンの影響で乳腺が発達するほか、皮下脂肪も付きやすくなることが、妊娠中の体の変化です。
これだけでなく、妊娠中は全身の血液量が妊娠前と比べると増加するといわれています。そのため、赤ちゃんの体重分だけでなく、ママの体の変化によって体重が増えていくのです。
妊娠中に増えた体重が、出産後に戻るのか気になるママもいるかもしれません。
赤ちゃんの体重が平均的な3,000gだとすると、出産直後は胎盤や羊水とともに約5kg減少すると推測されます。しかし、妊娠中に増えた血液量は、すぐにはもどりません。数週間掛けて、妊娠前の血流量に戻っていくといわれています。
適正な体重増加は、ママと赤ちゃんの健康のために大切です。医師の指導がないのに、自己判断で体重増加をおさえると、赤ちゃんに影響がある可能性があるため避けましょう。適正な体重増加の範囲であれば、出産後に妊娠前の体重に戻すことは難しくないと考えられています。
体重管理をしていくには、摂取エネルギー量を把握することも大切です。妊娠中は、赤ちゃんの成長のために、妊娠前よりも余分にエネルギー摂取が必要だといわれています。日本人の食事摂取基準で示されている、妊婦の摂取エネルギー付加量は以下の通りです。
妊婦の推定エネルギー必要量(付加量)
・妊娠初期:+50kcal
・妊娠中期:+250kcal
・妊娠後期:+450kcal
体重増加は個人差があります。上記のエネルギー必要量を守っていても、増えすぎてしまったり、反対に増えなかったりすることがあるかもしれません。妊娠中のママの体重や赤ちゃんの発育を考慮しながら、摂取エネルギー量を調整することも、日本人の食事摂取基準では言及されています。
体重が過度に増えすぎると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高くなるといわれています。
また、体重増加が少ないと赤ちゃんの体重が増えず、低出生体重児として生まれる可能性があります。
そのため、妊娠中の体重が増えすぎることも、増えないことも避けたいもの。どちらになっても、ママと赤ちゃんの体に心配なトラブルにつながりやすくなるのです。
妊娠高血圧症候群は、妊娠中の収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上となった高血圧の状態を指します。妊娠中の女性の約20人に1人の割合で起こるといわれています。
重症化すると肝臓や腎臓の機能が悪くなるほか、脳出血、常位胎盤早期剥離、胎児発育不全などの合併症を起こすこともあります。
妊娠前から高血圧、糖尿病、腎臓病の持病があるほか、高齢出産、多胎妊娠、初産婦は、妊娠高血圧症候群になるリスクが高くなると考えられています。
また、妊娠中の体重が過度に増えすぎる場合も、妊娠高血圧症候群のリスクが高まる恐れがあるため、体重管理は大切です。
妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて血糖値が高くなった、糖代謝異常を指します。
妊娠中は、血糖値が上がりやすい傾向にあります。これは、胎盤からでるホルモンの影響で、血糖値のコントロールが上手くいかなくなるためです。そのため、妊婦健診では血糖値の検査が行われます。
妊娠糖尿病になると、妊娠中のママは、妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、流産、早産などのリスクが高まるといわれています。お腹の赤ちゃんへの影響もあり、巨大児、子宮内胎児死亡、黄疸、低血糖など、心配される症状が起こるかもしれません。
妊娠中の体重増加が著しくなることも、妊娠糖尿病のリスクが高くなると考えられています。
低出生体重児とは、生まれたときの体重が2,500g未満の赤ちゃんです。低出生体重児で生まれると、赤ちゃん自身が将来、生活習慣病のリスクが高くなるといわれています。
赤ちゃんの体重が増えない原因は複数あります。ママが妊娠高血圧症候群である場合や、赤ちゃんに疾病がある場合などです。また、ママのBMIが低体重の場合、摂取エネルギー不足によって、赤ちゃんが低出生体重児になるリスクが高まるともいわれています。
原因は、妊娠中の体重が増えないだけではありませんが、リスクを減らすためにも適正な体重増加が望ましいと考えられるでしょう。
妊娠中の体重管理は、ママと赤ちゃんの健康を守ることにつながります。
また、赤ちゃんに必要な栄養を送るためには、何をどのように食べるのかを意識したいものです。望ましい体重増加に向けて、おさえておきたいポイントを3つご紹介します。
妊婦健診では体重を測りますが、自宅でも体重測定をすることがおすすめです。体重の増減によって、摂取エネルギーが適切かどうかの判断にもつながります。
体重は同じ条件で測定しましょう。着ている服の重さや、飲んだ水の重さなどが体重に影響してくるからです。
例えば、朝起きてトイレに行ったあとにパジャマ姿で、または、入浴前の服を脱いだ状態が同じ条件で測定しやすいと思います。
体に必要な栄養素はさまざまです。バランスを整えた食事をすることで、過不足なく栄養素を摂取できるといわれています。
食事の栄養バランスを整えるには、ごはんやパンなどエネルギー源となる「主食」、肉類・魚類・卵類・乳製品・大豆などタンパク源となる「主菜」、体の調子を整える野菜を使った「副菜」を揃えると良いでしょう。さらに、果物も1~2種類取り入れると、エネルギーのほか、ビタミンやミネラルも摂取できます。
主食・主菜・副菜を揃えるだけでなく、幅広い食べ物を使うことも大切です。主菜は豚肉ばかり食べていたり、特定の魚ばかりを食べたりすると、摂取できる栄養素が偏る心配があります。
また、不足しがちなカルシウムの摂取も心掛けたいもの。牛乳や乳製品、小松菜など、カルシウムを多く含む食べ物も取り入れていきましょう。
つわりが始まって体調が悪いときは、食事が喉を通らないことがあります。体重減少が著しいほか、必要な栄養が摂取できていない場合は、かかりつけ医に相談してください。
塩分の摂りすぎは、むくみや妊娠高血圧症候群の原因になる可能性があります。妊娠中は塩分を控えめにした食事を意識することが大切です。
しかし、塩分を控えると、味気なさを感じるかもしれません。味気なさを防ぐには、だしで旨味を加えたり、スパイスを加えたりすると味わい深くなりますよ。
塩分を控えた食生活は、出産後の体調管理にも役立ちます。
妊娠中の体重増加量は、妊娠前のBMIによって個人差があります。また、妊娠経過やママの体調にも個人差があります。体重増加量の目安を先述しましたが、かかりつけ医からの指導があった場合は、そちらを優先してください。そのほかにも、体重管理で心配なことがある場合は、かかりつけ医や自治体の相談窓口へ相談すると安心です。
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