妊娠中に気をつけたい「トキソプラズマ症」ってなに?

「トキソプラズマ」という言葉をはじめて聞くという人も多いですよね。トキソプラズマ症というのはトキソプラズマという寄生虫によって起こる病気。この寄生虫への感染は通常時ならそこまで怖くないのですが、妊婦さんが妊娠中にはじめて感染した場合、低体重児や流産など胎児に悪影響を与えてしまう可能性があるのです。今回はそんなトキソプラズマの症状や感染を防ぐ方法などをまとめました。

トキソプラズマとは

トキソプラズマ症はトキソプラズマという原虫に感染することで起こる病気のこと。

このトキソプラズマというのは半円~三日月型をした大きさとしては1mmにも満たない程小さく、動物や鳥類に寄生したり土壌や水に潜伏したりしています。

そんなトキソプラズマの感染力は強く、世界中の人口の3分の1はすでにトキソプラズマに感染したことがあるといわれています。

子どもも大人も関係なく感染しますが、通常時だと重篤な症状は現れにくい病気。しかも、1度感染すると抗体ができるため症状自体が現れなくなります。

そんな普段はあまり心配しなくてもいいトキソプラズマ症ですが、実は妊娠中の女性がはじめて感染すると大変。

ママが感染してしまうとそのまま寄生虫が胎児にも感染してしまい、『先天性トキソプラズマ症』を起こしてしまう可能性があるのです。

トキソプラズマ症の症状は?

大人がトキソプラズマに感染してしまった場合、風邪のような症状や筋肉痛、リンパの腫れなどの軽い症状ですみます。

しかし、胎児がトキソプラズマに感染してしまうと、貧血や痙攣、黄疸や発疹などの症状ですむこともあれば、脳性麻痺や髄膜炎といった重篤な症状が現れてしまうこともあります。

また、低体重児や精神・運動機能障害の原因となってしまうこともありますし、最悪流産や死産をしてしまうこともあります。

お腹の中の赤ちゃんのためにも、妊娠中には絶対にトキソプラズマの感染は避けたいですね。

トキソプラズマの感染を防ぐには

そんなトキソプラズマですが、実は空気によって感染する飛沫感染や皮膚の上から感染する経皮感染はなく、ほぼ全ての感染は口から原虫が侵入することが原因だといわれています(※1)。

そのため、口に入れるものをきちんと対策しておくだけでかなりの確率で感染を防ぐことが出来ますよ。対策方法は次の通りです。

※1 国立感染症研究所によると、ごく稀に経口感染だけでなく眼瞼結膜からの感染も確認されているそう。

豚や鶏など、ほ乳類や鳥類のお肉には必ず火を通す!

トキソプラズマは、多くの哺乳類や鳥類などに寄生しながら成長します。

そのため、レバ刺、鳥刺、生ハムなど生のお肉はNG。お肉は必ず中心部まで火を通してから食べるようにしましょう。トキソプラズマは熱に弱いのでしっかり熱を通すことで感染を防ぐことができます。

ちなみに、国立感染症研究所では中心が67℃になるまでの加熱が必要だと話しています。

なお、細かいようですが魚介類は生でもOKですが、鯨はNGですので注意してください。

また、「調理のまな板を肉用とその他用に分ける」のも有効な対策方法ですよ。トキソプラズマは次亜塩素酸やエタノールなどの消毒剤が効きませんので、きちんと分けていた方が安心です。

土や水は触ったらよく手を洗う!

トキソプラズマは土の中にもいるため、こういったものに触れることで感染してしまうこともあります。

野菜についている土をしっかり落とすのはもちろんですが、普段の生活でも土や水には注意する必要があります。

ガーデニングや畑仕事をする時にはゴム手袋を着用し、その後しっかりと手を洗うことが大事になります。また、砂場なども感染源になりますので気をつけましょう。

また、あまり触れられてはいませんが、トキソプラズマは土だけでなく水の中でも生息しています。井戸水やわき水等は必ず煮沸消毒などの処理をしてから飲むようにしましょう。

アウトドアなどで川遊びをする時にも、水が触れた場所はよく洗うようにしたいですね。

猫のトイレを清潔に。速やかに家族に処理してもらいましょう!

ペットでネコを飼っているという人はショックかもしれませんが、トキソプラズマという原虫は普段は分裂して増えるのにネコに感染した時だけは腸で生殖して活発に増殖することが分かっています。

そのため、ネコの糞からトキソプラズマに感染してしまうということもあります。

ただし、ネコが糞をしてすぐの間は感染力も低いため、24時間以内に処理してトイレ容器を熱湯消毒し清潔なトイレを保っていれば簡単に感染してしまうことはないといいます。

でも、その対策でも感染してしまう可能性は0ではありませんので、できれば妊娠中は猫のトイレのお掃除は妊婦さん以外にしてもらえたら安心ですね。

対策と一緒に検査も受けて!

トキソプラズマは、かかってしまった時の重篤な症状が現れる可能性から産婦人科の検診でも検査をすすめられる病気です。

トキソプラズマは清潔な環境にいる人ほど感染したことがある可能性が低く、日本の都市部での妊婦さんのトキソプラズマ抗体保有率は5~10%程度だといわれていますので特に心配な人は検査を受けて確かめてみましょう!

検査は妊婦さんに限らず産婦人科で受けることができ、血液を採取して抗体があるのか調べます。

1度かかっていて抗体があるという人は「妊娠中にトキソプラズマにかかってしまうこともなく胎内感染も防ぐことができるので安心」というわけです。

費用は大体千円前後。妊婦さんの場合は妊婦健診と一緒に受けることができますよ。

ただ、トキソプラズマの抗体があっても生肉を食べるのは食中毒などの可能性がありますので、妊娠中は避けたいところです。

必要以上に不安にならなくても◎

トキソプラズマは、妊娠中に女性がはじめて感染してしまうと赤ちゃんに障害を与えてしまったり流産や死産のリスクが高まってしまったりという危険な病気です。

ただ、ママが妊娠中にはじめて感染したらもれなくお腹の中の赤ちゃんにも感染するというわけではなく、胎内感染率は60~80%程度といわれています。

また、妊娠の週数がすすんでいくにつれ赤ちゃんが重症になる確率は低くなっていくというデータもあります。(妊娠初期は65%、中期は30%、後期は0%)

感染していた場合、抗体がいつできたのかを特定し、赤ちゃんへの感染を防ぐための薬を投与してもらえるため、過度に心配しすぎて「お肉は食べない!」「土は触っちゃだめだからガーデニングはしない!」などとピリピリしていると、反対にストレスで身体によくないかも。

対策のポイントをおさえつつ、趣味や食事への制限はなるべく減らすようにしたいですね。

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