2021年05月01日 00:00
妊娠中は赤ちゃんにしっかりと栄養を送って、すくすくと元気に育ってもらいたいもの。そこで、どのような食べ物を選んだら良いのか、知りたいと思っているママもいるのではないでしょうか。お腹の赤ちゃんに影響があるとよく知られているのが、アルコールとカフェインです。実は注意したいのは、アルコールとカフェインだけではありません。今回は、妊娠中に注意したい食べ物を解説します。
お腹の中で赤ちゃんは、約10カ月かけてママの体から栄養をもらって大きくなっていきます。大人なら体に影響のない食べ物も、体の小さな赤ちゃんには影響を与えるものがあるのです。
また、適量であれば体づくりに役立つ栄養素でも、過剰に摂取すると赤ちゃんに与える影響が心配されます。食事が極端に偏るほか、同じ食べ物ばかりを食べ続けると、栄養素を過剰に摂取してしまう可能性を否定できません。
では、食べ物に含まれている栄養素やそのほかの成分などで、妊娠中に気を付けたいものには何があるのでしょうか。
食べ物には、体に必要な栄養素が含まれているだけではありません。食中毒の原因になる菌やウイルス、そのほかの感染症を引き起こす微生物などが付着していることがあります。
食べ物に付着している微生物の中には、お腹の赤ちゃんに影響があるため注意が必要です。
感染症の原因になる微生物
・リステリア
・トキソプラズマ
リステリアは、土や水の中など私たちの周りに当たり前にいる細菌です。個人差はありますが、妊娠していない時期なら、感染しても重症化することはほとんどないといわれています。しかし妊娠中は、妊娠していない人よりもリステリアに感染しやすいことが分かっています。
欧米で起こったリステリア食中毒では、冷蔵庫に長期間保存され、加熱しないで食べる食品が原因となりました。
保存食には、塩漬けにして長期保存するものがありますよね。しかし、リステリアは、塩分濃度が高くても増え、冷蔵庫の低い温度でも生きることができます。
リステリア食中毒を防ぐには、原因となる食品を避けること、加熱調理をすることが大切です。
リステリアのほかに気を付けたいのが、トキソプラズマです。トキソプラズマは世界中に存在し、感染しているネコの糞や、ネコの糞が触れた土、感染している動物の肉を生で食べることで感染すると考えられています。
妊娠中に初めてトキソプラズマに感染すると、赤ちゃんへ感染する可能性があり、先天性トキソプラズマ症の原因になるため注意が必要です。
トキソプラズマの感染を防ぐには、ガーデニングや畑仕事などで直接土に触れないこと、調理前や食事前は手洗いを行うこと、加熱調理をすることを意識しましょう。
一部の魚介類では、体内のメチル水銀の濃度が高くなっています。妊娠中にメチル水銀を一定量以上摂取すると、赤ちゃんに影響を与える可能性があるため注意したいものです。
海や湖では、水中にいる微生物によって、メチル水銀がごく微量に作られています。メチル水銀を取り込んだプランクトンをエサとした魚は、さらに大きな魚に食べられ、次第に一部の魚にメチル水銀が蓄積されていくのです。
妊娠していない体であれば、メチル水銀が多く蓄積された魚を食べても、健康に影響がない量だといわれています。また、体に取り込まれたメチル水銀は少しずつ排出されていきます。
しかし、お腹の赤ちゃんにメチル水銀が移行すると、赤ちゃんは体の外に出すことができません。そのため、一部の魚介類を食べるときは注意が必要です。
ビタミンAは、皮膚や粘膜を健やかに保つなど、体の中でさまざまな働きをしているビタミンで、お腹の中の赤ちゃんにも必要です。レバーやうなぎ、鶏卵などの動物性食品に多く含まれていて、極端に偏った食事でなければ、不足しないといわれています。
しかし、それを知らず「妊娠中は栄養をとらなきゃ!」と考えるあまり、サプリメントや健康食品からもビタミンAを摂取してしまうと、過剰摂取になる場合があります。その結果、赤ちゃんに影響を与える可能性があるので注意が必要です。そのほかに、ビタミンAを多く含む食べ物の過剰摂取も避けたいものです。
しかし、妊娠中の栄養バランスを考えるあまりに、サプリメントや健康食品からビタミンAを摂取すると過剰摂取になるかもしれません。過剰摂取の結果、赤ちゃんに影響を与える可能性があります。そのほかに、ビタミンAを多く含む食べ物の過剰摂取も避けたいものです。
ビタミンAと聞くと、ニンジンやほうれん草などの緑黄色野菜を思い浮かべる方もいるでしょう。緑黄色野菜に含まれているβ-カロテンは、体の中で必要に応じてビタミンAに変わることが特徴です。そのため、緑黄色野菜の過剰摂取による赤ちゃんへの影響はないと考えられています。
以上のように、妊娠中は注意したい食べ物があります。しかし、アルコールのように少量でも控えた方が良いものばかりではありません。
食べる量や調理法に注意することで、食べられるものもあります。食事を過剰に制限すると、ストレスがたまってしまうこともあると思います。赤ちゃんへの影響を考慮しながら、食事を選んでいきましょう。
次に、妊娠中に注意したい8つの食べ物をご紹介します。
ナチュラルチーズは、牛やヤギなどの生乳に乳酸菌やレンネット(凝乳酵素)を加え、凝固させたものです。加熱殺菌を行わずに作られるため、リステリアが含まれていることがあります。
さまざまな種類があり、初めて見るナチュラルチーズは見分けられないかもしれません。ナチュラルチーズかどうか分からない場合は、パッケージの表示を確認することがおすすめです。
スーパーでよく見かける、主なナチュラルチーズは次の通りです。
ナチュラルチーズの一例
・カッテージチーズ
・クリームチーズ
・マスカルポーネ
・モッツアレラ
・カマンベール
・コルゴンゾーラ
・パルミジャーノ・レッジャーノ
・チェダー
など
リステリアは、一般的な食中毒菌が死滅する75℃1分以上の加熱で死滅することが分かっています。ナチュラルチーズが使われている料理でも、ピザやグラタンのようにしっかりと加熱されているなら、妊娠中も食べて大丈夫です。
ですが、スパゲティのトッピングや、余熱で溶かしたナチュラルチーズは避けた方が良いでしょう。
見落としてしまいがちなのは、スイーツです。レアチーズケーキやティラミスには、ナチュラルチーズが使われていることがあり、調理過程で加熱が行われません。加熱をしないナチュラルチーズを使ったスイーツは、妊娠中は避ける方がおすすめです。
なお、プロセスチーズは加工の段階で加熱殺菌されているため、妊娠中も食べることができます。
生ハムは豚肉を塩漬けにして、長期間熟成させたものです。製造過程で加熱が行われないため、日本では「生ハム」と呼ばれるようになりました。
生ハムは、リステリア食中毒と先天性トキソプラズマ症の原因食品のひとつです。リステリアもトキソプラズマも、しっかりと加熱することで死滅します。
しかし、生ハムを加熱すると、本来とは違う食感や風味になってしまいますよね。そのため、生ハムを食べるのは出産後まで待つ方が良いかもしれません。
スモークサーモンは、塩漬けにしたサーモンを燻製にしたものです。加熱をせずにそのまま食べることが多いため、リステリア食中毒の原因となります。
リステリア食中毒は、しっかりと加熱することで予防できます。パスタなどの具として、中心部までしっかりと加熱されたスモークサーモンであれば、リステリア食中毒になる可能性は低くなるでしょう。外食などで加熱の加減がわからないなど、不安な点があるなら、避ける方がおすすめです。
パテは、肉や魚を細かく刻むほか、ペースト状にしたのち、型に入れて火を通したものです。加熱調理のあと、冷ましてから食べます。フランス料理の前菜やオードブルなどでよく見かける料理です。
加熱後すぐに食べる料理ではないため、肉や魚のパテは、欧米でリステリア食中毒の原因となっています。食中毒を予防するためにも、妊娠中は避けた方が良いでしょう。
魚をエサにしている一部の大きな魚は、食物連鎖によってメチル水銀が多く蓄積されている可能性があります。妊娠中に注意が必要な魚は、以下の通りです。
注意が必要な魚の一例
・キダイ
・マカジキ
・ミナミマグロ
・クロムツ
・キンメダイ
・メカジキ
・クロマグロ
・メバチマグロ
など
しかし、メチル水銀が多い可能性があるからといって、食べてはいけないわけではありません。厚生労働省は、妊婦が1週間に食べる目安量を示しています。
1週間に食べる目安量
・キダイ、マカジキ、ミナミマグロ、クロムツ:80g(1人分)×2
・キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチマグロ:80g(1人分)×1
このように適量であれば、妊娠中も食べることができるのです。
なお、一般的によく食べられている魚のうち、アジ、サバ、イワシ、サンマ、タイ、ブリ、カツオ、キハダ、ビンナガなどは、食べる量に注意する必要はありません。
魚は良質なタンパク質を含み、積極的に摂取したい脂肪酸のDHAやEPAが多い傾向があります。栄養バランスを整えた食事を意識するなら、魚も取り入れることがおすすめです。
もしも、妊娠が確定するまでの初期に、一部の魚介類を多く食べてしまったとしても問題はないといわれています。メチル水銀は、妊娠4カ月ごろにできる胎盤を通して赤ちゃんに移行するからです。
厚生労働省 これからママになるあなたへ お魚について知っておいてほしいこと
鶏、豚、牛のレバーは、ビタミンAが豊富に含まれています。また、不足しがちなミネラルである鉄も多く含まれている食べ物です。
妊娠初期から摂取したい鉄の量が増えるため、レバーを食事に取り入れようと意識しているママもいるかもしれません。しかし、レバーを食べすぎると、ビタミンAの過剰摂取が心配されます。
日本人の食事摂取基準では、ビタミンAの過剰摂取が心配されるため、耐用上限量が示されています。18歳以上の女性の耐用上限量は2,700μg/日です。
レバーに含まれているビタミンAの量を確認しておきましょう。
100gあたりのビタミンAの量
・鶏レバー(生):14,000μg
・豚レバー(生):13,000μg
・牛レバー(生):1,100μg
焼き鳥の鶏レバーの串は1本30gほどですから、1本食べるだけで耐用上限量を超えてしまいます。赤ちゃんに影響がある可能性があるため、レバーの量を一口分だけにするなどして控えるか、続けて食べない方が良いでしょう。
うなぎにもビタミンAが多く含まれています。うなぎのかば焼きに含まれているビタミンAの量は以下の通りです。
うなぎかば焼き(1人前80g)に含まれるビタミンA量:1,200μg
1食あたりで考えると、耐用上限量は超えません。ですが、うなぎのほかにビタミンAを多く含む食品を食べた場合は、超えてしまうこともあるため注意したいものです。うなぎは量を調整するほか、毎日食べ続けなければ、妊娠中も食事に取り入れられます。
甘酒には、米麹を発酵したものと、酒粕から作られたものがあります。酒粕は日本酒を絞ったあとの残りであり、アルコールが含まれています。そのため、酒粕から作られた甘酒にはアルコールが含まれているため、妊娠中は注意が必要です。
加熱することでアルコール分は飛びますが、どのくらいの量のアルコールが減少したのかは、はっきりとわかりません。そのため、酒粕から作られた甘酒は、妊娠中は避けた方が無難です。
妊娠中に注意したい食べ物を8つご紹介しました。アルコールのように避けた方が良いものだけでなく、摂取できる栄養素を考えると、適量を取り入れたほうが有用な食べ物もあります。調理法や摂取量を考慮しながら、食事に上手く取り入れてみてはいかがでしょうか。
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