2021年08月01日 00:00
哺乳瓶の消毒は実際いつ頃まで必要なのでしょうか?哺乳瓶の消毒は意外と面倒な作業ですよね。最近では消毒が不要という話も耳にするようになりました。今回は、哺乳瓶の消毒はいつまで行うのが適切なのか、方法などについて詳しく説明していきます。
哺乳瓶の消毒は赤ちゃんに影響を及ぼす病原菌からの感染を予防するために行います。
FAO(国連食糧農業機関)/WHO(世界保健機構)によると、乳児ではサカザキ菌とサルモネラ菌による感染で重症化、死亡してしまったなどの例があると言われています。サカザキ菌やサルモネラ菌は粉ミルクと関連しています。粉ミルクは無菌状態で製造されるわけではなく菌が混入する場合があります。サカザキ菌やサルモネラ菌は乾燥状態だと増殖はしませんが、1年以上生存し続けることができます。
また、少ない量でも感染症を発症することから、細菌の感染を避けるためにも哺乳瓶の消毒が必要になります。これらの菌は5℃以下では増殖しませんが、温度が上がると増殖をふせぐことが困難になっていまいます。
増殖した菌は洗浄だけだと残ってしまう可能性もあるため、菌が残らないために消毒が必要になります。
赤ちゃんは、ママの子宮内で無菌状態で育っており、免疫機能に関わる免疫グロブリンを自力で産生する機能が未熟です。免疫機能が未熟なうちは、洗浄に加え消毒を行い菌から赤ちゃんを守る必要があります。
特に早産児や低出生児の場合は、正期産(37週以降)で生まれた赤ちゃんよりも免疫機能未熟であるため、消毒が必要になります。
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると哺乳瓶の消毒は少なくとも1日に1回行い、免疫機能が未熟な生後3カ月ごろまで続けるのがよいとされています。少なくとも1日1回ということなので、免疫機能が弱い早産児や低出生児の場合は、頻繁に消毒をすることが必要なこともあるかもしれません。つまり、哺乳瓶の消毒の目安として生後3か月頃までと言われていますが、早産児や低出生児、または病気で免疫機能が弱っている赤ちゃんは時期をすぎても消毒を行った方が良い場合があります。
消毒が必要なのがなぜ生後3か月頃なのかというとそれは赤ちゃんの免疫機能が関係しています。新生児は胎盤を介してママからIgGという免疫グロブリンを受け取り体に蓄えています。ママからもらったIgGは生後6か月頃にはほぼなくなってしまいますが、生後3か月ごろから赤ちゃんが自らIgGを作り出すとされています。他の免疫グロブリンにIgMやIgAがありますが、これらは胎盤を介さないためママからはもらえず、赤ちゃんが徐々に作り上げていきます。
ちょうど生後3か月頃が免疫グロブリンが最低値となる時期であり、免疫機能が低下しやすい時期となります。この時期を過ぎると赤ちゃん自ら免疫グロブリンを作り出す機能がついてくるので、最低でも免疫が低下している時までは安全のため消毒を行っておくのが良いということになります。ちなみに、早産児はIgGを十分に受け取る前に生まれることになるため、感染リスクが高まります。そのため3か月を過ぎても赤ちゃんの状態によってはもっと長い期間の消毒が必要になることもあり得るので、かかりつけ医などに確認してみましょう。
消毒をする前に、粉ミルクのカスなどをしっかり洗浄することが最近繁殖を防ぐ第一歩となります。哺乳瓶の正しい洗浄方法をもう一度確認していきましょう。
食器洗浄機でも哺乳瓶を洗うことができます。
手洗いよりは楽ですね。
哺乳瓶のボトル、キャップ、乳首、フードなどすべて解体できるものは解体します。
お湯でも水でもどちらでもよいので、部品を流水でしっかりすすぎます。
哺乳瓶の部品を食器洗浄機へ入れ実行します。
細かい物品は隙間に詰まってしまうことがあるため、専用の小物ケースに入れて洗浄します。
お湯の洗浄、乾燥機能があれば使用します。そうすると、より多くの汚れや細菌などを除去することができます。
手を石鹸と水で洗った後に、哺乳瓶を取り出します。
哺乳瓶が乾いていない場合は、キッチンペーパーなどの上に置いて自然乾燥させます。
乾燥している場合は清潔な場所で保管しておくと良いです。
この時に付近やキッチンペーパーなどで部品を拭いてしまうと雑菌などが移ってしまうので注意しましょう。
だいたい流れは食器洗浄機と同じですが、スポンジやブラシなども使用するため洗う道具の管理が大事になります。
石鹸をよく泡立て20秒以上しっかり手を洗います。
哺乳瓶をフード、キャップ、乳首、ボトルなどにすべて分解します。
分解したあとは部品を一つずつよく水洗いします。
哺乳瓶を洗うための清潔な桶のような専用容器に物品をすべて入れます。シンク台は細菌が哺乳瓶を汚す可能性もあるので、直接シンクでは洗わず専門の容器を使うのがポイント。
他の食器などを洗うスポンジではなく、哺乳瓶専用のスポンジやブラシで洗います。
汚れが残りやすい乳首も、乳首スポンジでしっかり洗い、水を絞り出すように洗います。
泡をしっかりとすすぎます。温かいお湯でも水でも良くて、とくに指定はありませんが自然乾燥しやすいようにお湯ですすぐと良いかもしれません。
ゆすぐ時も哺乳瓶専門の別の容器があると良いでしょう。
清潔な場所でキッチンペーパーなどの上で乾かします。キッチンペーパー水気をふき取ることは逆に汚染になってしまうので、自然乾燥で問題ありません。
哺乳瓶の洗浄後は、シンク台や使用したスポンジをよく洗い乾かし清潔を保ちます。
自宅での哺乳瓶の消毒方法として煮沸消毒と消毒液(漂白剤)での消毒、電子レンジの加熱での消毒方法があります。また、哺乳瓶だけではなくスポンジやブラシなども消毒することが望ましいです。ブラシやスポンジにはナイロンやシリコンなど性質によっては扱い方が違うので説明書を確認しましょう。
煮沸消毒は、お湯を沸かして熱湯で細菌などを殺す方法となります。専用の鍋とトングがあればいいので低コストで消毒が可能です。
哺乳瓶を消毒液に付けておくのが特徴です。専用のケースが必要となるため、場所を確保できる人に良いでしょう。
薬液が赤ちゃんに悪い影響を及ぼさないか心配になると思いますが、消毒液は乾燥すると分解されるので問題ないと言われています。
電子レンジでの消毒はスチーム機能を使って熱で細菌を殺す消毒法となります。消毒を時短したい人には手軽でいいかもしれません。
製品によって電子レンジを回す時間が異なるので説明書に記載通りに行いましょう。
それぞれの消毒方法において共通して言えることが、ほこりが付着しづらい清潔な場所で乾燥させ、保管することです。部品を再度水洗いしたりキッチンぺーパーなどで拭いてしまうとせっかく消毒した物品が汚染されることになっていまいます。
哺乳瓶使用前に消毒を行うことが望ましいですが、できるだけ清潔な場所で保管しましょう。
厚生労働省から出ている乳児用調整粉乳の安全な調乳、保存及び取り扱いに関するガイドラインには、徹底的に洗浄および滅菌することが非常に重要視されています。
一方、アメリカ疾病予防管理センターによると、食器洗浄機にお湯で加熱し乾燥するサイクルが備わっている場合は、個別に消毒する必要がないと言われています。
また台所用洗剤とブラシで十分に洗浄することによって病原菌が除去されたという論文もあるようです。アメリカ小児科医学会でも哺乳瓶の消毒が必要だとしているのは一部の専門家であり、アメリカを中心に哺乳瓶の洗浄後の消毒は不要であるという説もあります。子どもが免疫機能が低下する時期を超えたころには、成長と共におもちゃや身の回りの物を口に入れることも増えてきてます。免疫機能を身に着ける時期においては、洗い残しがないようにしっかり洗浄をするだけでも良いのかもしれません。
サカザキ菌やサルモネラ菌に感染した事例を見ると、粉ミルクの管理方法や保存方法に問題があったケースがほとんどのようです。つまり、細菌感染しないように粉ミルクの衛生管理をすることがまず求められることとなります。細菌が繁殖する条件や注意するべきことについてあげていきます。
FAO/WHOによると、70℃以上のお湯で粉ミルクを調乳する場合は、サカザキ菌は死滅するので感染のリスクが劇的に減少すると言われています。
70℃以上のお湯で調乳した場合、室温が35℃に達する場合でもあっても、サカザキ菌が容易に増殖しないという結果を得られているようです。そのため、70℃に待たないお湯で調乳した場合は、少数の菌であっても感染リスクが高くなることを示します。また調乳後、冷蔵温度(4~6℃)以上の温度で長時間放置した場合は菌が増殖する可能性が高くなるため、70℃以上のお湯で調乳することは非常に重要なポイントとなります。粉ミルクはぬるめのお湯でも溶け、冷やさなくても赤ちゃんにすぐ飲ませることができるので便利かもしれませんが、サカザキ菌などの感染リスクがあることを覚えておきましょう。手間はかかりますが、70℃以上のお湯で調乳し、適温まで冷やして赤ちゃんに粉ミルクを与えるようにしましょう。
70℃以上のお湯で調整した場合でも2時間以内には飲ませるようにしましょう。
調乳してから赤ちゃんが飲まなかった場合でももったいないですが、衛生上処分することが大事です。
調乳してから2時間以内に飲まないとわかっているときには、調乳直後に冷蔵保存をするようにしましょう。ただし、熱い状態のミルクを冷蔵庫に保存してしまうと、冷蔵庫の全体温度が上がったり、調乳した粉ミルクがすぐに5℃以下にならなかったりするので、調乳した粉ミルクを冷水で冷やしてから冷蔵庫に保存する作業が必要となります。冷蔵保存しておいた粉ミルクでも24時間以内に消費することが安全です。5℃未満の温度で保存することで有害細菌の増殖を妨ぎ、遅らせることができます。
哺乳瓶で搾乳した母乳をあげるということもあります。母乳にも栄養が含まれており温度が5℃以上だと雑菌などの増殖が考えられるので、保存や管理には気を付けていきたいところです。搾乳後常温であれば4時間以内に消費し、搾乳後すぐに冷蔵保存した場合は3日間の保存が可能です。冷凍であれば3~6カ月の保存が可能となります。
調乳する前には必ず石鹸と水でしっかりと手洗いをする必要があります。授乳はオムツ交換後にすることが多いですよね。オムツ交換した手で、哺乳瓶のフードやキャップ、乳首に触れるだけで、赤ちゃんにとって害となる細菌が付着してしまいます。必ず調乳する前や赤ちゃんに哺乳瓶で飲ませる前には手洗いをしっかりしましょう。
生まれたばかりの赤ちゃんは免疫機能が未熟なので菌から守るために哺乳瓶の消毒が必要なことがわかりました。哺乳瓶の消毒は休む時間が削られて、手間がかかりますが、生後3か月頃までは行うことが感染症のリスクを下げることにつながります。状況によっては洗剤とブラシで洗浄するだけでも菌を除去できるという説もあるため、赤ちゃんの成長に合わせて工夫してみてもいいかもしれません。消毒も大事ですが、もう一度基本的な手洗いや洗浄方法、70℃以上のお湯で調乳することなどを実践していき、赤ちゃんの安全を守っていきたいですね。
参考文献
1,世界保健機関/国連食糧農業機関 乳幼児調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン 2007年
3,宋美玄、森戸やすみ 新装版 産婦人科医ママと小児科医ママの授乳らくちんBOOK 2018年 内外出版社
4,有森直子編、母性看護学Ⅱ 周産期各論 第2版 質の高い周産期ケアを追求するアセスメント.スキルの習得、2021、医歯薬出版株式会社
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