2023年02月01日 00:00
妊娠の喜びも束の間、次にやってくるのはつわりです。つわりは様々な種類のものがありますが、特に注意しておくべきなのは食べづわりです。気分が悪いからといって、手あたりしだい食べていると、急激な体重増加に繋がり、妊娠経過や分娩時に影響を及ぼしてしまいます。 今回はつわりの1つである食べづわりについて、しっかり学んでいきましょう。食べづわりの辛さを乗り切る対策やおすすめの食べ物についてお伝えしていきますので、食べづわりで辛い思いをしている妊婦さんは、ぜひ参考にしてみてくださいね。
つわりというと、いきなり吐き気や嘔吐を催すというイメージがあるかもしれません。つわりには、吐きづわり、食べづわり、よだれづわり、眠りづわりなど様々な種類があります。そのうちのひとつ、食べづわりはお腹がすいている時に気分が悪くなってしまうつわりのことを指します。常になにか口にいれて、空腹を満たしておかなければ吐き気などの症状が強くなってしまうのが、この食べづわりの特徴です。
つわりは一般的に妊娠5~6週から始まり、胎盤が完成する妊娠16週頃にはおさまっていきます。しかし、個人差も大きく、妊娠後期までつわりが続く妊婦さんは5~20%、出産までつわりが続く妊婦さんは5%ほどになるという報告もあります。ひとつのつわりだけではなく、それぞれのつわりの種類が組み合わさっておこる場合もあり、症状の出方や辛さも個人によって異なってきますので、自分のつわりがどのような種類のものか向き合うことも大切です。
食べづわりは空腹時に気分が悪くなるため、空腹を満たしてさえいれば症状はそこまで重くなりません。
しかし、口にするものによっては体重増加につながってしまいます。妊娠中の体重管理をしなければいけない妊婦さんにとっては、非常に難易度が高くなります。なぜ、食べづわりがおこってしまうのでしょうか。
つわり自体に影響を及ぼすのがホルモンバランスの変化です。妊娠すると胎盤のもととなる絨毛組織からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されます。このホルモンは妊娠を維持するために非常に重要なものですが、このホルモンの分泌が上昇していくと、身体がこのホルモンバランスの変化についていくことが出来ずに、副反応として嘔吐や食欲不振などのつわり症状を引き起こすと考えられています。
この症状の出方には個人差があり、症状が強い人、軽い人、吐きづわりの症状や食べづわりの症状など様々です。
hCGの分泌によって黄体ホルモンが分泌され、妊娠の維持に関わってきます。しかし、この黄体ホルモンは、実は胃腸の動きを抑制してしまう働きがあることがわかっています。体内にガスが溜まったり、吐き気や不快感の原因になったりします。
実母や姉妹などでつわり症状が強い場合は、遺伝の可能性もあります。一度確認してみるとよいでしょう。
食べづわりは、空腹時に気分が悪くなるつわりです。具体的な症状としては、空腹時の吐き気、嘔吐、むかつきなどがおこります。食べづわりで注意しなければならないのは、妊娠初期からの体重増加です。妊婦さんは、BMIにより適切な体重増加量が決まっています。
一般的に妊娠初期は比較的体重増加は緩やかで、後期からぐっと体重増加がおこってしまいます。この妊娠初期に体重を増やしてしまうと、あとで体重コントロールができなくなってしまい、大幅に体重オーバーとなります。もし、妊娠初期に食べづわりによって大幅な体重増加があった場合は、食べづわりがおさまったあとに調整するようにしましょう。
また、大幅な体重増加は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクを高めます。これらの妊娠合併症は、赤ちゃんの成長発達に影響を及ぼす可能性が高く、しいては出産後も母体に悪影響を及ぼすこともあります。出産にも影響し、分娩遷延や肩甲難産、最悪緊急帝王切開になってしまうこともあります。妊娠中は、適切な体重増加を守るようにしましょう。
現在、妊婦の痩せ志向が高まり、妊産婦を取り巻く食についての環境が変化していることから、2019年3月、厚生労働省による「妊産婦のための食生活指針(2006)」が大幅に改定されました。妊娠する前から、健康な身体づくりや適切な食生活の構築を目的としています。内容としては、妊娠前の健康な身体づくりや妊産婦に必要な食事内容、妊産婦の食事全般、身体や心の健康についてなどの10項目となっています。
また、妊産婦の適切な体重増加に関しては、日本産科婦人科学会の「妊娠期の体重増加の目安」を参考とし、BMI18.5未満の妊婦の体重増加指導量が引き上げられました。適切な体重増加は以下の通りになります。
妊娠前の体格 | BMI | 体重増加量指導の目安 |
低体重 | 18.5未満 | 12~15㎏ |
普通体重 | 18.5以上25.0未満 | 10~13㎏ |
肥満1度 | 25.0以上30未満 | 7~10㎏ |
肥満2度 | 30以上 | 個別対応(上限5㎏まで対応) |
食べたくないのに、気分が悪くて食べずにはいられない食べづわり。体重管理もしないといけないのに、どのようにして乗り切ればいいのか迷っている妊婦さんも多いのではないでしょうか。以下に、食べづわりを乗り切る方法について紹介していきます。
食べづわりを乗り切る一番の方法は、お腹がすいている時間帯を少なくすることです。しかし、非妊時と同じように3食しっかりと気分が悪くなり、つわり症状が悪化する可能性があります。そのため、少量ずつ小分けにして食事をとるようにしましょう。
なかなか栄養バランスまで気にする余裕がないかもしれませんが、栄養バランスを意識すると、お腹がすきすぎるといったことはありません。少量ずつしっかり噛んで満腹感を得るようにしましょう。
食べづわりで一番調子が悪いのは、起床時です。起床時は一番血糖値が低く、吐き気や嘔吐などの症状が出やすい時間帯です。起床時にすぐになにか食べられるように、枕元に軽食を準備しておきましょう。
身体を締め付けることで症状が悪化してしまうこともあります。身体を締め付ける下着やズボンなどをやめて、ゆったりめのワンピースなどを着ると身体が少し楽になります。
つわりは、ストレスによって悪化します。つわりがひどい場合は、できるだけ、リラックスしてストレスをためないようにすることが大切です。睡眠は、身体と心をゆっくり休める最大のリラックス方法です。生活リズムが乱れると、ストレスもうまく解消できずに、つわりが悪化してしまいます。しっかりと睡眠時間を確保するためにも、1日の生活リズムをしっかり整えるようにしましょう。
食べづわりの注意点は、高カロリーのものを食べすぎて体重が増加してしまうことです。体重増加が気になってきたら、食生活を見直すチャンスです。食べているものを書き出して、低カロリーのものを選ぶようにしましょう。
水分をとって気分が悪くならないようであれば、水分で空腹を満たすこともいいでしょう。しかし、ジュースや炭酸などのカロリーが高いものを摂りすぎると妊娠糖尿病になる可能性が高くなりますので注意が必要です。
色々な食べ物が食べたくなる食べづわりですが、手当たり次第食べていると体重がオーバーしてしまったり、妊娠糖尿病になったりと、出産に影響していまします。生活の中で取り入れやすい食べづわりにおすすめの食材を紹介します。
ゆで卵は少量でも食べ応えがあり、栄養価が非常に高い食べ物です。塩を少量つけたり、醤油などで味付けしたりして、バリエーションを楽しみましょう。ゆで卵のカロリーはお茶碗によそったご飯の3分の1のカロリーですので嬉しいですね。
水分補給と栄養をとれるスープは、つわりが辛い妊婦さんにおすすめの食事です。作り置きもできて、具材を変えれば飽きることもありません。しかし、煮込みすぎると栄養素が壊れてしまいますので注意しましょう。
つわりの時、ヨーグルトはなくてはならない存在です。冷たくてのど越しもよく、妊婦さんが不足しがちなカルシウムを補うことが出来ます。妊婦さんに必要な1日のカルシウム摂取量は、650㎎。無糖タイプのヨーグルトは、100gにつき約120mgのカルシウムが入っており、吸収率も非常によいのでおすすめです。ただし、糖分が多く含まれているので、食べすぎには注意が必要です。選ぶときは無糖のものにするようにしましょう。
小分けにしたおにぎりは栄養補給になります。バリエーションが豊富で、持ち運びも便利です。ちょっと小さめのサイズにしておくとベスト!
オーストラリアの研究によると、ショウガを食べるとつわりが軽くなったという妊婦さんが53%もいることがわかっています。ショウガには吐き気止めの作用がありますので、サプリメントや料理などで上手に活用するとよいですね。
腹持ちの良さや栄養価が高いことから、野菜スティックはおすすめです。セロリ、キュウリ、ニンジンなどをディップすれば食べやすいですね。できれば農薬を使用していない有機野菜を使用するといいでしょう。
つるっとのどごしよく食べることが出来るので、つわり中はおすすめです。ただし、糖分がかなり高いですので食べすぎには注意しましょう。
つわり中は、非妊時よりも味覚が大幅に変化します。今まで食べたことがなかった、もしくは避けてきたものが無性にほしくなってしまうことも。しかし、食べ過ぎると体重増加や妊娠合併症を引き起こしかねませんので注意が必要です。どのような食べ物があるか見ていきましょう。
無性に塩気がたっぷりのフライドポテトが食べたくなった経験はありませんか?毎日でも食べていたという妊婦さんもいそうですね。フライドポテトは妊婦さんでも食べやすいもの代表例ですが、脂質と塩分、糖質が非常に高いです。食べすぎには注意しましょう。
塩気とほどよい噛み応えがつわり中の妊婦さんに人気のビーフジャーキー。タンパク質やビタミンも豊富に含まれています。しかし、加熱していないため、食中毒になる可能性もあります。食べすぎには注意しましょう。
冷たくて口の中がひんやりするため、つわり中でも食べやすいのが特徴です。しかし、アイスは、糖質、脂質がたくさん入っています。また、身体を冷やすことにもつながりますので、小分けにして食べるようにしましょう。
つわりの中でも注意しないと妊娠経過や分娩に影響を与える食べづわり。わかっていても食べずにはいられないため、妊婦さんにとっては非常に辛いと思います。できるだけ、急激な体重増加を防ぐために、食事のとり方に注意するようにしましょう。
ライター:秋元祥世
プロフィール
福岡県出身。麻生看護専門学校を卒業後、福岡県立大学看護学部に編入。助産師、保健師国家資格取得。助産師として総合周産期センター等で病棟や外来に約10年勤務する。その後、赤ちゃん専門のフォトグラファーの資格を取得。3人の男の子の子育てをしながら地域でベビーサロン&フォトスタジオHugComeを開業。
行政による子育てサロン運営も行っており、地域でママ達が楽しく育児ができるように育児相談やサポート、イベント企画をおこなっている。
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