妊婦さんに知ってほしい話~妊娠中の薬との付き合い方~

妊娠中の薬の服用は、不安になると思います。お腹の赤ちゃんへの影響が心配ですね。できれば薬の服用を避けたい、と思うのではないでしょうか?しかし、病気療養中の場合や一時的な体調不良時は、薬の服用が必要となります。すべての薬が胎児へ影響があるとは限りません。妊娠中の薬との付き合い方について、妊娠の基本も含め注意点などをお話していきます。

■妊娠と薬

妊娠中の薬の服用は、慎重にしなければいけません。なぜなら、薬の影響が胎児に先天性奇形や発達障害などの影響を及ぼす場合があるからです。母親が薬を服用すると、胎盤を通って胎児の血液中に入ります。胎児は身体が未熟のため、体内に入った薬を十分に排泄できません。すべての内服薬が胎児に影響を与えるわけではありませんが、注意が必要な薬があります。妊娠の週数による胎児への影響や考慮する薬剤、万が一服用した場合について、お話していきます。

○妊娠時期による胎児への影響

薬の服用による胎児への影響は、妊娠の時期によって異なります。薬の影響を受けやすい時期と、あまり影響の受けない時期があります。それに関係するのは、胎児の器官形成です。妊娠時期の胎児の器官形成と合わせ、薬の影響についてお話していきます。

・無影響期 / 妊娠4週未満

胎児の器官形成が開始されていない時期です。薬剤の影響で奇形などを引き起こす可能性は、少ないです。ただし、残留性のある薬剤については、注意が必要となります。それらの薬剤は、「エトレチナート(角化症治療薬)」、「リバビリン(抗ウイルス薬)」、「レフルノミド(抗リウマチ薬)」などです。

・絶対過敏期 / 妊娠4週から7週まで

胎児の脳や神経、心臓、胃腸、手足などの重要な器官が形成される時期です。とても薬の影響を受けやすい時期でもあります。自己判断での薬の服用は、避けましょう。必ず医師からの指示のもと、薬の服用をします。

・相対過敏期 / 妊娠8週から15週まで

口蓋や性の分化が形成され、胎児の重要な器官の形成は終わっている時期です。奇形を起こす心配は少なくなりますが、薬の服用には注意が必要となります。

・潜在過敏期 / 妊娠16週から分娩まで

薬の影響で奇形を起こす危険性が少ない時期です。妊婦さんが服用した薬が胎盤を通して胎児の体に入ります。薬によっては、胎児に影響を与えることもあります。例を挙げると、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)です。胎児の血管を収縮させる働きがあります。この薬は痛み止めで、市販薬として購入することも可能です。痛みの緩和のため、自己判断で内服をするのは避けましょう。

○注意が必要な薬

妊娠中に服用する薬について「避けたい薬剤」と「慎重に使用する薬剤」に分けて表記しました。これらの薬は、妊娠中の服用をできるだけ避けたい薬剤ではあります。しかし、妊娠中に服用をしても必ず胎児に影響が出るとは限りません。妊娠を希望している場合、注意が必要な薬剤として参照してください。また、これらの薬を服用中で妊娠を希望している場合は、主治医に必ず伝えて内服薬の相談をしましょう。

・避けたい薬剤

抗生物質:アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系

抗菌薬・抗ウイルス剤:リバビリン,キニーネ

抗高脂血症薬:プラバスタチン,シンバスタチンなど

抗ガン剤

麻薬

睡眠薬:フルラゼパム,トリアゾラムなど

抗潰瘍薬:ミソプロストール

抗凝固薬:ワーファリン

ホルモン剤:ダナゾール,女性ホルモン

ワクチン類:麻疹ワクチン,おたふくかぜワクチン,風疹ワクチンなど

子宮収縮止血剤:エルゴメトリン

角化症治療薬:エトレチナート

片頭痛治療薬:エルゴタミン

・慎重に使用する薬剤

降圧剤:βブロッカー,ACE 阻害剤,アンギオテンシン II受容体阻害剤など

抗けいれん剤:フェニトイン,フェノバルビタール,バルプロ酸など

抗うつ剤:イミプラミンなど

非ステロイド抗炎症薬:アセトアミノフェン以外の抗炎症薬

向精神薬:リチウム

利尿剤

○妊娠と気づかずに服用した場合

妊娠初期は生理が遅れているだけなのか、妊娠しているのか分かりづらい時期です。妊娠していると分からずに、薬を服用してしまうこともあると思います。しかし、必ずしも薬の影響が胎児に出るとも限りません。まずは、1人で悩まずに医療機関に相談をし、受診しましょう。その時には、何の薬をどのくらいの期間、服用したことを把握し、医療機関に伝えてください。必ず自己判断はしないでください。薬の服用の判断をするのは、医師です。医師の指示のもと、今後の薬の服用をしましょう。

■病気に対する薬の服用

妊娠中において、病気療養中や一時的な体調不良時は、薬の服用をする場合があります。そして、予防接種はどうするべきか悩むでしょう。薬の服用に対する不安も含め、項目ごとにお話していきます。

病気療養中の薬の服用

妊娠をすると、病気療養中の薬の服用について不安になるでしょう。現代では、高齢出産の方が増えており、病気で内服治療中であることがあります。胎児への影響を心配し、自己判断で服用を止めてしまうケースがあります。薬の服用を中止すると、病気の悪化が胎児への影響を及ぼすこともあります。まずは、病気療養中の主治医へ妊娠したことを伝えましょう。主治医と産婦人科医の相談のもと、薬の服用を調節することがあります。主治医の指示のもと、薬の服用をしましょう。病気療養中の薬の不安を軽減するために、妊娠を希望している段階で主治医にその意向を伝えましょう。胎児への影響が少ない薬への配慮も考えられます。まずは、主治医に相談することが大切です。

妊娠中の一時的な薬

妊娠中には、風邪やインフルエンザなど一時的な病気に罹り、薬の服用をすることがあると思います。自己判断で市販薬を服用するのは、止めましょう。必ず医療機関に受診をし、妊娠していることを伝え、医師から処方された薬を服用します。一時的な病気や症状として挙げられるのは、花粉症・便秘・胃腸炎・頭痛などです。妊娠中はお腹が大きくなることで、腸の動きが低下し便秘になりやすいです。なかには、薬の服用を心配して我慢してしまうケースも見られます。妊娠中に服用をしても、胎児に影響が出ない薬もあります。辛い症状などがあるときは、自己判断はせず医療機関に相談し、受診しましょう。

妊娠中の予防接種

妊娠中の予防接種については、接種可能なワクチンと接種不可能なワクチンに分かれます

予防接種のワクチンは2種類あり、生ワクチンと不活化ワクチンです。生ワクチンは、病原微生物をそのまま使用します。不活化ワクチンは、死んだ病原体の一部を使用します。生ワクチンは、胎児へ影響を及ぼす可能性が高いので、妊婦さんの接種はできません。一方で不活化ワクチンは、胎児への影響が低いため、接種可能となります。接種できない生ワクチンは、麻疹風疹・おたふくかぜ・水ぼうそうなどです。接種できる不活化ワクチンは、インフルエンザ・B型肝炎・肺炎球菌などです。毎年、冬の時期に流行するインフルエンザの予防接種は、受けてみるのも良いでしょう。因みに現在、世界的に流行している新型コロナワクチンは、妊娠中や妊娠を希望時でも接種可能と言われています。しかし、具体的な症例などのデータは、調査中です。予防接種を希望しているが不安などがある場合は、医療機関に相談をしてから接種しましょう。

○妊娠中の薬の不安

お腹の中の赤ちゃんのことを考えると、妊娠中の薬の服用は心配になると思います。医師と相談した上で処方された薬でも、不安になることもあるでしょう。その場合は、医師だけでなく薬剤師にも相談することをおすすめします。医師から処方された薬よりも、胎児への影響が少ない薬への変更も考慮します。薬剤師から医師へ処方の変更の依頼をすると、変更になることもあります。薬に対する不安は、薬剤師に相談することも可能です。それでも不安がある場合は、他の医療機関への受診もひとつの方法です。自分が納得してから薬を服用するのも良いでしょう。

■服用に注意が必要なサプリメント

サプリメントに関しては、妊娠中に過剰摂取をすると、胎児に影響を及ぼす場合があります。以下2つ、サプリメントの胎児への影響についてお話していきます。

ビタミンAサプリメント

ビタミンAは、緑黄色野菜の食事に含まれる成分です。皮膚や粘膜、眼の機能を保護する働きがあります。妊娠初期に過剰摂取をすると、胎児の奇形を起こす可能性が高いです。実際にアメリカでは、妊娠初期のビタミンA過剰摂取により、胎児の奇形が報告されています。妊娠中は、サプリメントではなく、食事からビタミンAを摂取しましょう。

イソフラボン含有サプリメント

イソフラボンは、大豆に含まれる成分です。女性ホルモン同様の働きをします。妊娠中は、サプリメントを過剰摂取すると、胎児に影響を及ぼします。ホルモンのバランスが乱れ、胎児の生殖機能に影響が出ます。妊娠中はサプリメントではなく、食事からイソフラボンを摂取することをおすすめします。

まとめ

妊娠することは、とても喜ばしいことですね。お腹の中の赤ちゃんを大事に育てたいと思うでしょう。そのため妊娠中の薬の服用は、とても心配になると思います。医師から処方された薬を服用することで、胎児への影響を少なくすることが可能です。不安や心配なことに対しては、ひとりで抱え込まないことも大切です。心配なことなどは、必ず医療機関に相談しましょう。産まれてくる赤ちゃんのために、不安の軽減も大事ですね。


\そのほか、妊娠中に避けた方がいいことって?こちらをチェック!/

妊娠後期に避けたほうがいいこと、やったことがいいことって?