妊婦検診で実際にかかるお金は?妊婦検診の費用と助成制度を説明

妊娠判明後から出産までの間、お母さんと赤ちゃんの健康状態を確認するために重要な妊婦検診。妊娠週数によって、検診回数や検査内容が変化します。実際に妊婦検診にかかる費用や市町村の助成制度について把握しておくことで、金銭面や手続き面の不安を減らすことができます。今回は妊婦検査の費用や助成制度、内容について詳しく紹介します。

妊婦検診の目的は?

妊婦検診とは、妊娠から出産までに定期的に受ける検診のことをいいます。赤ちゃんが順調に育っているかの確認や、母体の健康チェックを目的としています。定期的な検診を受けることで、病気の早期発見や妊娠や出産への心の準備につながります。また病院側は出産時に必要な処置や注意すべきことを事前に把握できるメリットがあります。しっかり妊婦検診を受けて、心身ともに安心して出産に臨める環境をつくりましょう。

 

妊婦検診でかかる費用は?

では、妊婦検診で実際にかかる費用はどれくらいなのでしょうか。妊婦検診は保険適用でなく、検査や通院にかかる費用は全て自己負担になります。実際に検査ごとに見ていきましょう。

 

原則保険適用されない

毎回の妊婦検診で行う基本検査や超音波検査では、1回3,000~,7000円程度かかります。妊婦検診は自由診療のため、病院ごとに価格設定も自由です。平均的には5,000円前後の価格設定の病院が多いですが、最新の設備が充実した病院や人気の病院では1万円近くかかる場合もあります。事前に病院のホームページで確認しておくと、安心して受診できます。

 

仮に1回の検査を5,000円として、計14回の妊婦検診でかかってくる基本検査費用は7万円。この基本検査に加えて、血液検査や感染症検査、子宮頸がん検診などの特別検査費用が上乗せされます。基本検査と特別検査を合わせると、検診1回あたり1万円~2万円ほどかかります。トータルで妊婦検診にかかる費用は10~15万円程度になることが多いです。

 

出生前診断を受ける場合は、検査内容によって3~20万円程度かかります。超音波検査では3~5万円程度が多いですが、羊水検査や絨毛検査のように精度の高い検査では10~20万円程度かかってきます。出生前診断は妊婦検診と比べて、病院ごとに可能な検査内容や価格が大きく異なるため、こちらも事前に確認しておくことがおすすめです。

 

異常が発見された場合は保険適用になる

日本の医療制度では、妊娠は病気として扱われないため、妊娠にかかる検査費用は原則保険適用されません。しかし、妊婦検診で異常を発見された場合や妊娠中に病気にかかってしまった場合には、保険が適用されます。

 

例えば、妊婦検診の血液検査で血糖値に異常値が出た場合に行う、血糖負荷検査(OGTT)は保険適用となり、3割負担となります。さらに血糖負荷検査(OGTT)で妊婦糖尿病と診断された場合には、治療にかかる費用も保険が適用されます。他に保険適用となるものとして、重症妊娠悪阻や切迫流産、早産、妊娠高血圧症候群などが挙げられます。

 

妊婦検診で使える助成制度は?

妊婦検診では、国や地方自治体からの助成制度を使うことができます。医療費控除や、里帰り出産時に使える制度なども把握しておくと便利です。自己負担額が多い検診費用ですが、助成制度を上手に使うことで出費を減らすことができます。実際に各種制度について詳しく紹介していきます。

 

妊婦健康診査受診券(補助券)

妊婦健康診査受診券は、妊娠届を提出した時に母子手帳と一緒にもらうことができます。妊娠届は、初回検診で胎嚢や心拍を確認して妊娠判定を受けた後に提出する届です。

 

妊婦健康診査受診券は別名で補助券やクーポンとも呼ばれており、検診1回につき1枚を使えます。検診14回分を交付する自治体が多く、自治体によっては子宮頸がん検診や超音波検査に使うことができる補助券も交付しています。妊娠判定を行うための初回検診では、補助券を使うことができないため、あらかじめ病院に費用を確認して多めにお金を持っていきましょう。2回目の検診からは、診察前に受付に出すことで検診費用から補助金の額が差し引かれます。補助券は住んでいる市区町村または、周辺の市区町村の医療機関でないと使うことができません。

 

補助金の総額は都道府県ごとに7~13万円の間で異なり、平成30年4月1日時点の全国平均は105,734円です。都道府県とは別に、市町村で助成制度を拡充している場合もあります。実際に補助券の内容や枚数については、各自治体のHPや窓口に確認するといいでしょう。

 

医療費控除

医療費控除とは、妊婦検診に限らず使うことのできる制度です。1年間で支払った医療費が10万円を超えた場合に、払い過ぎた所得税の還付を受けることができます。手続きをするには翌年の決められた期間(通常は2月16日~3月15日)に、確定申告をする必要があります。

 

実際の還付金額の計算方法は次の通りです。

①医療費控除額を計算する(上限200万円まで)

医療費控除額=1年間で支払った医療費の総額-(保険金・給付金の総額+10万円)

②還付金額を計算する

還付金額=医療費控除額×所得税率

 

1年間で支払った医療費には妊婦検診や出産費用はもちろん、妊娠とは関係のない歯医者での治療費やかぜの診療費も含めることができます。妊娠・出産が重なる年は支払う医療費が高額になりやすいため、病院にかかった時の領収書は必ず保管しておくようにしましょう。

 

償還払い

償還払いとは、里帰り出産をした際にかかった妊婦検診費用のキャッシュバックを受けることができる制度です。通常、里帰り先で受ける妊婦検診では補助券を使うことができません。

この場合、あとから対象の補助券を受け取った市区町村で手続きを行うことで、未使用の補助券の助成額を受け取ることができます。手続きの方法や必要書類は自治体ごとに異なるため、各自治体のHPや窓口に確認しましょう。

 

傷病手当

現在働いていており、勤め先の健康保険に加入している方が対象となる制度です。病気やケガにより3日以上、仕事を休まざるを得ない状況で、その期間に給与が出ない場合に利用できます。休職4日目から最長1年6か月までの間、加入している健康保険より傷病手当金が支給されます。妊娠時以外にも使うことができ、妊娠中は産休を除く期間が該当します。妊娠中だと重症妊婦悪阻や妊娠高血圧症候群、切迫早産などで、医師から一定期間の療養が必要と診断されたときに使うことができます。

 

傷病手当金額の計算方法は次の通りです。

傷病手当金額=標準報酬月額÷30日×3分の2×休職4日目以降の日数

※標準報酬月額は、基本給に残業代や各種手当を入れた支給金額を、毎年4月から6月までの3か月間で平均して算出します。

 

傷病手当では最初の3日間を有休消化としたとしても、4日目以降は無給であれば傷病手当の対象となります。

 

妊婦検診の具体的なスケジュールや内容は?

妊婦検診では、毎回共通して下記の基本検査が行われます。

<健康状態の把握>

医師による問診・診察などの実施

 

<検査計測>

子宮底長、腹囲、血圧、浮腫、尿検査、体重などの測定

 

<保健指導>

妊娠中の食事や生活についてのアドバイスや、妊娠・出産に対する心の不安のケアなどを実施

 

妊娠週数や母子の健康状態に応じて、医学的検査も行われます。厚生労働省では、14回分の妊婦検診を基にスケジュールを公表しています。実際にどのようなスケジュールで進められるのか、妊娠週数に分けてみていきましょう。

 

初回検診

初回検診では、妊娠判定検査が行われます。「妊娠したかも」と思ったら、早めに受診することが大切です。

 

診察では、まず尿検査で妊娠判定を行います。 その後、経腟超音波検査と内診で胎嚢を確認します。胎嚢とは赤ちゃんが入っている袋のことで、早い人だと妊娠5週から確認することができます。

 

妊娠初期~中期(23週)

初期から23週にかけては4週間に1回の頻度で、計4回受診します。妊娠初期には基本検査に加えて、下記の検査を行います。

 

<血液検査>

次の項目について、初期に一回行います。

血液型:出産時に輸血が必要となった場合などの、緊急時に備えて調べる

血算:血液中の白血球や赤血球の数量を調べて、免疫力や貧血、出血のしやすさを調べる

血糖:妊娠糖尿病の恐れを調べる

B型肝炎抗体・C型肝炎抗体・HIV抗体・梅毒血清反応・風疹ウイルス抗体・HTLV-1抗体:母子感染リスクを抑えるために調べる

 

<子宮頸がん検診>

子宮頸がんの有無を調べる検査です。がんが発覚した場合には、進行度によって妊娠継続をするか、がんの治療を優先するかを判断します。血液検査同様に、初期に一回行います。

 

<超音波検査>

赤ちゃんの発育状況や羊水量の確認、胎盤やへその緒の位置の確認をします。23週までに最低2回検査を行います。

 

<性器クラミジア検査>

早産の原因となるほか、分娩時に母子感染がおこる危険性があるため、検査します。厚生労働省では妊娠30週までに1回の検査が必要されていますが、妊娠初期に行われることが多いです。

 

妊娠中期~後期(24週~35週)

24週から35週にかけては、2週間に1回の頻度で、計6回受診します。妊娠中期では早産の危険性が出てくるため、妊娠初期に比べて検診頻度が上がります。検診内容は基本検査に加えて、下記の通りです。

 

<血液検査>

妊娠初期と同様に、感染症や妊婦糖尿病の有無を調べるために血算と血糖を検査します。

検査はこの期間内に1回行います。

 

<B群溶血性レンサ球菌>

B群溶結性レンサ球菌が膣内に存在し、出産時に赤ちゃんに感染すると、肺炎や敗血症などを起こす恐れがあります。母子感染リスクを抑える目的で、この期間内に1回検査を行います。

 

<超音波検査>

超音波を用いてお腹の中の赤ちゃんの発育状況を確認します。期間中に3回以上は行われることが多く、実際に赤ちゃんが成長していく様子を見ることができます。この時期には赤ちゃんの内臓機能も備わってくるため、機能や構造が正常であるかしっかり観察していきます。

最近では3Dエコーだけではなく、4Dエコーを導入している病院も増えており、赤ちゃんの顔やしぐさを動画で見ることができます。お母さんやお父さんにとっても嬉しい検査の一つです。

 

臨月(36週~出産)

妊娠36週から出産までの後期は、週に1回の頻度で計4回受診します。出産予定日が近く、いつ陣痛が起きても対応できるように、小まめに経過を確認する必要があります。検診内容は基本検査に加えて、下記の通りです。

 

<血液検査>

この期間にもう一度血算を調べ、出産時に出血した場合に速やかに対処できるように最終確認します。

 

<超音波検査>

羊水の量や胎盤の位置をしっかり把握して、出産に向けた準備を整えます。

 

<ノンストレス検査(NST)>

横になった安静な状態を20分~40分程保って、赤ちゃんの心拍数と子宮の張り具合を確認する検査です。おなかの中の赤ちゃんが元気かどうかを確認するために行います。

 

定期妊婦検診以外の検査

定期妊婦検診以外にも、希望や必要に応じて下記の検査を行うことがあります。

 

<血糖負荷検査(OGTT)>

定期健診中の血液検査で、血糖値に異常があった場合に行う検査です。妊娠中は血糖値が上がりやすく、妊婦糖尿病になる恐れがあります。妊婦糖尿病ではお母さんや赤ちゃんへの合併症をもたらす危険性もあり、重要な検査の一つです。

 

<出生前診断>

赤ちゃんに病気や障害がないか、事前に調べる検査です。母体への負担の少ない超音波検査から、比較的母体への負担が大きい羊水検査や絨毛検査までさまざまな検査法があります。超音波検査では赤ちゃんに病気や障害の可能性の有無を調べることができ、羊水検査や絨毛検査では赤ちゃんの遺伝子異常を調べて病気や障害の一部確定を行うことができます。

 

妊婦検診の持ち出し金は4~7万円程度

これまで妊婦検診の費用や助成制度について見てきました。妊婦検診でかかる費用は通常10~15万円程度。補助券を使うことで、実際の持ち出し金額は4~7万円程度になることが多いです。

妊婦検診の費用や内容は病院ごとに異なるため、予算や重視したい検査項目をもとに病院選びをしましょう。補助券は受診時に毎回必要になるため、母子手帳ケースや財布に入れておくと忘れずに済みます。補助券の使い漏れがないように、妊娠判定後は早めに自治体で受け取りましょう。

 

妊婦検診はちゃんと受けよう

妊婦検診は母子ともに無事に出産をむかえるために、大切な検診です。検診を通して、お腹の中の赤ちゃんが成長していく様子を確認できたり、出産や育児に向けた心の準備をしたりすることができます。特に健康面で困ったことがなく、検診費用がもったいないと思う方もいるかもしれません。助成制度を上手に活用すれば、検診費用も抑えることができます。安心して妊娠期間を過ごし、万全の状態で出産に臨むためにも妊婦検診は必ず受けるようにしましょう。


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