【看護師監修】着床完了のサインとは?いつ起こるの?

妊娠を望んでいる場合、いつ着床したのか早く知りたいですよね。着床した後、体の変化を感じて、「もしかして妊娠したかも…」と気づく場合もあるかもしれません。実際、着床完了後のサインはどのような症状があるのでしょうか?今回は、着床の成立や時期、着床した際のサイン、診断方法について詳しく説明していきます。

着床完了までの流れ

 

着床が完了するまで、1.排卵、2.射精、3.受精、4.着床という過程を経ていきます。

 

排卵

排卵とは卵巣から卵子が排出されることを言います。卵子の原型となる原子卵胞は母親のお腹の中にいる時から存在しており、排卵に向けて成長・発育していきます。数個の原始卵胞が同時に成熟し、その中で排卵する卵子が1つだけ選択されます。選択された卵胞のことを主席卵胞といい、主席卵胞が選択されると他の卵胞の発育は終了します。主席卵胞が2㎝ほどまで大きくなり、成熟卵胞となります。卵胞の成長過程でエストロゲンが分泌され、エストロゲンの分泌がピークになると黄体化ホルモン(LH)という排卵を促すホルモンが急激に分泌されます。このLHの働きにより、成熟卵胞が排出され、排卵が起こります。卵子は、生理周期に1回の頻度で卵巣の壁を破って出てます。

排卵された卵子は卵管采(卵子をキャッチする部分)を得て、卵管(子宮につながる道)を通っていきます。

 

射精

射精は男性の精巣で作られた精子が男性生殖器から排出されることを言います。1回の射精での精子の数は2~4億個。射精直後の精子には受精機能はなく、膣から卵管に移動するときに精子の先端のタンパク質や脂質が剥がれることで、受精機能を獲得できます。受精機能を獲得できる精子の数は1~2万個と言われています。

 

受精

受精は卵子に精子が入り込むことで成立します。受精できるタイミングは、卵子が排卵後約24時間、精子が射精後約48~72時間で、卵子と精子が出会うタイミングが重要となります。排卵した卵子は卵管膨大部(卵管采に近く卵管が膨れている場所)で精子を待ちます。射精された精子は1分毎に2~3㎜ずつ膣から子宮内に移動し、数時間から十数時間で卵管膨大部にたどり着きます。射精する精子数の2~4億個の中から、数百個だけ卵管膨大部に行きつくと言われています。多数の精子が卵子に侵入しようとしますが、1つの精子だけが侵入することができます。最初に卵子の壁を突き破り侵入した精子だけが卵子と融合し「受精卵」となります。

 

着床

着床とは受精卵が子宮内膜にくっつき始めることをいいます。卵管膨大部で受精した受精卵は分裂し成長しながら子宮内に移動し、子宮に到着した時には胚盤胞となります。胚盤胞は透明の殻(透明帯)に覆われており、着床する時には透明帯を脱皮(ハッチング)して子宮内膜と接着します。胚盤胞が完全に子宮内膜に埋まると着床完了となります。一方で子宮内膜は着床できる時期が決まっています。子宮内膜は生理が終わると増殖期となり、子宮内膜がふかふかになるように厚くなっていきます。その後分泌期に入り排卵を契機にプロゲステロンが分泌され、受精卵に栄養を補給できるように準備されます。着床が成り立つには、子宮内膜が着床の準備ができている時に、胚盤胞がよいタイミングで脱皮することが決め手となります。

 

着床はいつ起こる?

 

妊娠3週頃

着床は妊娠3週頃に起こると言われており、排卵日から6~10日の間とされています。着床がいつ成されたか確実に検知することは難しいようですが、受精後7日目前後に着床が進行すると言われています。妊娠3週頃は、ちょうど子宮内膜も分泌期であり、着床の準備が整っている時期となります。

 

妊娠周期について

妊娠周期は受精や着床した日から計算すると考えるかもしれませんが、最終生理の開始日を妊娠週数の始まりとなります。確実な受精日や着床日が現段階では確定することが難しいため、最終生理開始日を妊娠0週とし、妊娠40週0日目が分娩予定日となります。「妊娠初期」は0~15週、「妊娠中期」は16週~27週、「妊娠後期」は28週~42週となります。

 

 

着床した際のサイン

 

着床出血

「着床出血」は受精卵が子宮内膜に埋まっていく際に傷ついた血管から出血して起こります。少量のことが多いので、出血というよりうすピンクのおりものっぽいものが出ることがあります。着床出血は、着床すると必ず起こるわけではありません。着床出血は1日~4日以内に終わることが多いようです。場合によっては生理と間違えることもしばしばあります。

 

生理が来ない

着床後は妊娠を維持するために生理が止まります。生理の停止にはhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)とプロゲステロンというホルモンが関係しています。本来月経は、プロゲステロンの分泌が停止して起こります。着床した後は、着床した胚盤胞からhCGが急速に分泌され、このホルモンが身体に妊娠したことを知らせます。その結果プロゲステロンが分泌され続け、生理予定日を迎えても生理になりません。

 

基礎体温は高温相が持続

着床するとプロゲステロンが分泌されるため、基礎体温は高温期が17日以上持続します。妊娠しなければ、排卵後2週間後前後に低温相となりますが、着床するとプロゲステロンの作用により高温相が持続します。熱っぽい感じがしたり、実際に微熱になったりすることがあります。

 

おりものが増える

エストロゲンの分泌により、おりものが増えることがあります。エストロゲンは排卵後の9日目頃から分泌量が増加し、妊娠後期まで分泌し続け妊娠を継続するためにさまざまな役割を担っています。エストロゲンは、膣の分泌液を増やすので、おりものが増えたり、粘り気があったり、乳白色のおりものが出るなどの変化を感じることがあります。妊娠前のおりものが元々多めの場合もあるので、おりものの増加の感じ方には個人差があります。

生理が来なくなってから、比較的早い段階でおりものの変化が現れるようです。

 

嘔気・嘔吐

嘔気・嘔吐は、いわゆる「つわり」の症状です。つわりは一般的に妊娠5~6週で現れ、12週~16週頃には自然に消失することが多いようです。空腹時や食後に胃のむかつきや胃もたれを感じたり、吐き気をもよおしたり、食べられないものが出てきたりします。時には吐いてしまうことも。原因ははっきりとしていませんが、ホルモンバランスの乱れやhCGの影響が大きいと考えられています。すべての妊婦さんに起こるわけではなく約50~80%の妊婦さんに認められ、開始時期やピークの時期にも個人差があります。

 

トイレが近くなる

骨盤内での子宮が占めるスペースが大きくなり、膀胱が圧迫され頻尿になることがあります。そのため、トイレで用をたしてもすぐに尿意を感じたり、下っ腹がすっきりしなかったり、違和感を感じたりすることがあります。また、妊娠初期は血流が急激に増えると同時に腎臓への血流も増えます。そのため尿が作られやすくなり、頻尿などの症状が起こりやすくなります。我慢することは膀胱炎などの原因となるので、我慢しないようにすることは大事です。

 

乳房・乳頭の変化

エストロゲンやプロゲステロンの影響を受けて、乳房・乳頭の変化は妊娠初期から後期にかけて見られます。妊娠6週頃、体の血流が増加することにより血管も増加します。その際に乳房が張ったり、大きくなったり、乳首に痛みやかゆみを感じたりすることがあります。また乳頭や乳輪の着色が強くなり、乳頭の発達も見られるようになります。

 

その他、貧血や低血圧による立ちくらみやめまい、頭痛、疲れやすいなどの症状もみられることがあります。気分の変動(イライラしやすいなど)が激しくなるなど精神的な症状も出ることもあります。着床する時期は妊娠初期段階で、妊娠を維持するために全身が大きな変化を遂げ、ホルモン分泌も急激に変わります。そのためさまざまな症状が出現しますが、これらの症状全てが当てはまるわけではありません。また、これらのサインがあったから妊娠したと確定することはできないため、正確な診断が必要となります。

 

着床・妊娠の診断方法は?

 

妊娠検査薬

妊娠検査薬は尿中に検出されるhCGを利用し、妊娠反応を確認するものになります。着床した胚盤胞から妊娠初期を維持するためhCGが分泌され、妊娠7~10週ごろにピークとなります。一般的な市販の妊娠検査薬で陽性となるhCG分泌量は妊娠4.5週(生理予定日ごろ)と言われています。後ほど詳しく説明しますが、hCGが検知されても妊娠じゃない場合もあります。そのため妊娠検査薬で陽性が出たとしても、妊娠の確定診断とはなりません。使用する場合は生理予定日~1週間後のタイミングが良いでしょう。

 

超音波検査

着床・妊娠を確定して判定することができるのが超音波検査となります。膣からエコーを挿入して、胎嚢(着床している細胞)や胎芽(胎児およびその付属物)、胎児心拍を確認します。胎嚢は、妊娠6週まで、胎児の心拍動(心臓の動き)は7週頃まで確認することができます。心拍音は妊娠9週~12週頃までには聞くことができます。妊娠検査薬で陽性が出た場合は、産婦人科で確定診断を行ってもらいましょう。

 

着床時の異常

妊娠検査薬で陽性が出ると着床の可能性が高くなりますが、中には超音波検査で妊娠ではなく異常が見つかるという場合もあります。ここではどのような異常があるのか、どのような経過をたどっていくのか詳しく説明していきます。

 

異所性妊娠(子宮外妊娠)

異所性妊娠とは、受精卵が子宮以外の部位で着床し発育した状態のことで、全ての妊娠の1~2%の頻度で起こります。妊娠する部位は卵管が98%と割合が高く、卵巣や頸管、腹膜(胃や腸などを覆っている膜)に分けられます。卵管の中でも卵子と精子が受精する卵管膨大部での妊娠が多いようです。超音波検査で子宮外にある胎嚢を確認できるケースが稀であるため、子宮内に胎嚢を確認できなかった場合に数日~1週間後に再検査を行うことがほとんどです。異所性妊娠は、妊娠検査薬で陽性判定が出ても超音波検査で胎嚢が子宮腔内で確認できない場合に診断されます。残念ながら妊娠継続はできないため、手術や薬物療法により治療を行うことになります。異所性妊娠は大量出血により出血性ショックを起こし、命にも影響を及ぼす可能性があるため注意が必要になります。そのため、より早く確認するために、妊娠検査薬で陽性が出た場合、産婦人科で超音波検査を行うことが大事になります。

 

流産

流産は妊娠22週未満(21週6日)に妊娠が終了してしまうことをさします。人工的に妊娠を終了した場合は「人口流産」、自然に終了してしまった場合は「自然流産」といいます。この自然流産は全妊娠の8~15%を占めると言われています。その中でも80%は妊娠12週未満の早期での流産であり、妊娠早期での流産が多くなります。診断は超音波検査で行い、胎嚢はあってもその中に胎芽を認めなかったり、胎嚢と胎芽はあっても心拍を確認できなかったりすると流産と診断されます。早期の流産の原因は赤ちゃん側、つまり受精卵にあることがほとんどです。

また、一時的にhCGが陽性と判定されても、胎嚢が認められる段階までいかず生理のような出血が起こる場合(化学流産)があります。健康で若い男女カップルに30~40%の確率で起こると言われており、流産と気づかない場合もあります。

 

まとめ

着床に至るまで、排卵、射精、そして受精の過程を経ます。命が誕生するためにはそれぞれのタイミングが大事であることがわかりました。妊娠を心待ちにしている方にとって、着床完了のサインが気になるところですが、体に現れる症状のみでは確実な判断ができません。妊娠確認が可能な時期に合わせて妊娠検査薬を使ってみて、その後超音波検査で診断を受けることが大切です。正常な妊娠だけではなく、異所性妊娠や流産などの異常がある場合もあるので、適宜産婦人科を受診していきましょう。着床しているのかと緊張しますが、リラックスして過ごすことも良さそうですね。

 

 

<参考文献>

  • 森恵美、系統看護学講座 専門分野Ⅱ 母性看護学2、2020、医学書院
  • 森恵美、系統看護学講座 専門分野Ⅱ 母性看護学1、2020、医学書院
  • 有森直子編、母性看護学Ⅱ 周産期各論 第2版 質の高い周産期ケアを追求するアセスメントスキルの習得、2021、医歯薬出版株式会社
  • 公益社団法人 日本産婦人科医学会 生化学的妊娠の扱い方

https://www.jaog.or.jp/note/1%EF%BC%8E%E7%94%9F%E5%8C%96%E5%AD%A6%E7%9A%84%E5%A6%8A%E5%A8%A0%EF%BC%88biochemical-pregnancy%EF%BC%89%E3%81%AE%E6%89%B1%E3%81%84%E6%96%B9/


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