妊婦でも入れる保険ってあるの?妊娠中だからこそ考えたい保険やお金のこと

妊娠中は思いがけない体調不良や入院で出費がかさむことがあります。 急な出費に備えて保険を活用することは有効な手段の一つです。 今回は妊娠前や妊娠中に保険を検討する上で、知っておきたいポイントを紹介します。

妊娠・出産には想定外の出費が発生しやすい

妊娠はとても喜ばしいことですが、妊娠中は体調が変化しやすく注意の必要な時期です。

妊娠・出産では妊娠糖尿病をはじめとする妊婦特有の疾患にかかったり、帝王切開で出産することになったりする場合があります。

 

早産や妊娠糖尿病など妊婦特有の疾患にかかる場合がある

妊婦特有の疾患としては次の疾患が挙げられます。

・重度妊婦悪阻:つわりが重症化して脱水症状や大幅な体重減少等がみられる。全妊婦の0.5%が発症。

・切迫流産:妊娠確認後に出血や下腹部痛がみられるが、流産には至っておらず、妊娠継続できる可能性がある状態。全妊婦の15%が発症。

・切迫早産:妊娠22週から37週の間に分娩が始まりそうな状態を指し、下腹部痛や破水等の症状がみられる。全妊婦の15%が発症。

・妊娠糖尿病:妊娠中に糖代謝異常が生じ、高血糖状態になること。全妊婦の7~9%が発症。

・妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症):正常な血圧だった人が妊娠20週以降に高血圧になった場合に診断される。尿中のたんぱく質の増加も見られる。全妊婦の5%が発症。

 

これらの妊婦特有の疾患に加えて、妊娠中は免疫力が低下して細菌やウイルスによる感染が起こりやすく、重症化しやすい傾向があります。

普段から健康管理に注意することはもちろん、かかりやすい疾患を把握して備えることが重要です。

 

帝王切開で出産する割合は4人に1人

帝王切開とは、経腟分娩が困難であると判断されたときに行われる分娩法です。開腹手術により、赤ちゃんを取り出します。

厚生労働省の「平成29年度医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」では一般病院における帝王切開娩手術の割合が25.8%を占めており、帝王切開での出産が4人に1人の割合で行われています。

帝王切開娩手術の割合は平成8年では14.7%から約20年間で10%以上増えており、帝王切開での出産数は年々増加傾向にあります。

 

帝王切開には帝王切開を予定していた場合と、緊急で経腟分娩から帝王切開に変更する場合があります。

予定帝王切開になる場合としては、逆子など赤ちゃんの向きによって経腟分娩が困難な場合や多胎妊娠、前置胎盤が多く、基本的に妊娠37週以降に手術日を決めます。

一方、緊急帝王切開になる場合としては、胎児機能不全や出産前に胎盤が剥離してしまう常位胎盤早期剝離、分娩時の胎児の回旋に異常が生じた場合などが挙げられます。

緊急帝王切開では当日に母体や赤ちゃんの状態を見て手術に移ることもあるため、あらかじめ準備することが難しいです。

 

健康保険と民間保険の違いは?

妊娠・出産にかかる費用は基本的に保険の適用外となります。

しかし、妊娠中の疾患や異常分娩では健康保険と民間保険ともに使うことができます。

ここでは健康保険と民間保険の違いを紹介します。

 

妊娠中に起こりやすい疾患は健康保険でカバーされている

妊婦検診費用や通常の経腟分娩には健康保険は適用されませんが、妊娠中にかかりやすい疾患は基本的にカバーされています。

妊娠糖尿病などの治療費や、重度妊婦悪阻や切迫早産などで入院した際の入院費用、帝王切開に伴う手術費用などはすべて健康保険の適用内となります。

 

健康保険適用後の自己負担額が年間10万円以上になった場合は、医療費控除の対象となり、確定申告を通して所得税等の軽減を受けることができます。

一方で、入院時の食事代や個室利用時の差額ベッド代は健康保険の適用外となります。

 

民間保険では健康保険に加えて手厚い保障が受けられる

民間の医療保険では、健康保険に加えて保障を受けることができます。

健康保険の自己負担分を補える上に、入院給付金や手術給付金などを受け取ることができ、妊婦検診費用や里帰り出産時の交通費、出産後の育児費用に充てることができます。

妊娠・出産では、医療費の他にマタニティ用品や育児用品などの出費が意外とかかるため、民間の医療保険からの給付金もあると心強く感じられるでしょう。

 

民間の医療保険では商品によって保障内容や保険料が異なるため、欲しい保障が含まれているか、保険料がリスクに見合っているかを確認して選ぶことが大切です。

 

妊娠時に検討したい3つの保険

妊娠・出産は人生で大きなライフイベントです。

家族が増えることで今の生活や今後のライフプランの見直しが必要になるタイミングともいえるでしょう。

パートナーや子どもの将来を考えて、計画的にお金を準備していく必要があります。

今保険に加入している場合は保障内容が適切かを確認して、必要に応じて保険の見直しや新規加入を検討するといいでしょう。

 

医療保険で妊娠や出産に備える

医療保険では、迫りくる妊娠中の疾患や出産に向けて備えることができます。

また出産後は生活習慣病や急病への備えにもなり、予想外の出費に対応することができます。

一方で、妊娠中は保障内容や加入時期に制限がある商品が多く、早めの検討がおすすめです。

すでに加入している場合は妊娠・出産にかかる保障内容について、確認しておきましょう。

現在では妊婦向けの医療保険や、母子ともに保障対象に含まれる母子保険など保険商品のラインナップが増えているため、自分に合った保険を検討することができます。

 

生命保険で万が一に備える

生命保険では、自分やパートナーに万が一の事態があった場合に、子どもがお金を残すことができます。

残されたパートナーや子どもがお金に困らずに生活をしていけるように、保障額や保障期間が充分であるかを慎重に検討しておくことが重要です。

すでに加入していても、家族が増えることで保障内容が不十分になる場合があるため、しっかり見直しをしておきましょう。

 

学資保険で子どもの将来に備える

学資保険では、子供の教育費用をはじめとする育児費用を備えることができます。

教育費用は育児費用の中でも大きな金額を占めており、計画的に貯めていく必要があります。

文部科学省の「平成30年度学校基本統計(学校基本調査報告書)」と「国公私立大学の授業料等の推移」では、小学校から大学まで全て公立だった場合は総額731万円、大学のみ私立だった場合は総額863万円、全て私立だった場合は総額2,058万円と試算されています。さらに成人までにかかる養育費を含めると、2,000~3,000万円に達します。

学資保険は保険料を10~18年間支払い、子どもの大学入学前の満期時にまとめてお金を受け取れる内容のものが多いです。また両親が途中で死亡しても特約に加入しておくことで、満期時にお金を受け取ることができます。

商品によって満期時の給付金の利率が異なり、進学時に一時祝い金が出る商品もあるため、商品ごとに比較するといいでしょう。

 

妊娠前に医療保険を入っておくメリット

妊娠中に医療保険に加入する場合は、保障内容や保障期間に制限があることが多いです。

そのため、妊娠前に医療保険に加入しておくことで保険商品の選択肢が広がったり、充実した保障内容を受けられたりするメリットがあります。

 

選べる保険商品の幅が広い

妊娠前では保険加入時の制限が少なく、妊娠中に保険検討する場合と比べて、選べる保険商品の幅が広い点が魅力です。

妊娠中は定期健診で子宮筋腫や子宮内膜症など、思わぬ疾患が見つかることがあります。

そのような場合にも事前に医療保険に入っておくことで、充実した保障を受けることができます。

さらに妊娠前に医療保険に加入することで、妊娠中に加入した時よりも保険料を割安になることがあります。

将来的に妊娠や出産を考えている場合は、妊娠前に一度保険の加入を検討するといいでしょう。

 

一方、帝王切開歴のある方や不妊治療中の方は保険に加入できなかったり、制限が付いたりする場合があります。

帝王切開歴のある方が医療保険に加入する場合は、現在妊娠中でなくても特定部位不担保条件が付いていることがほとんどです。

特定部位不担保がついていると、妊娠・出産にかかる疾患や異常分娩が保障外となり、希望の保障を受けることができません。

帝王切開歴がある場合は加入前に告知義務がありますが、帝王切開後5年を経過していれば、告知義務がなくなります。保険によっては3年で告知義務がなくなる商品もあります。

不妊治療中の場合も同様に告知義務があります。

どちらも告知義務を怠った場合は、告知義務違反となり、いざ保険料を請求しても支払い拒否をされてしまいます。

過去に帝王切開での出産歴がある方や現在不妊治療中の方は、告知内容について保険会社にしっかり確認しておきましょう。

 

異常分娩などの緊急時に備えられる

妊娠前に医療保険に加入しておくことで、帝王切開や早産などの異常分娩の際に備えることができます。

経腟分娩は保障の対象外になりますが、異常分娩は健康保険と同様に保障の対象内になります。

今や4人に1人の割合で帝王切開での出産が行われており、異常分娩のリスクはしっかり考えておく必要があります。

最近では病院側が分娩の安全性を保つために、経腟分娩ではリスクが高いと判断した際にはスムーズに帝王切開に移行するケースも増えています。

経腟分娩での入院は産後5~6日程度ですが、帝王切開での入院は産後6~10日程度と長く、入院費用も経腟分娩に比べて高くなる傾向があります。

安心して出産を迎えるためにも、帝王切開や早産など異常分娩への備えは重要です。

 

妊娠中に医療保険に加入する場合のメリットとデメリット

医療保険をゆっくり検討する前に妊娠した方も、保険は妊娠中に疾患や出産に備えるために有効な手段です。

妊娠中に医療保険に加入する場合は、妊娠前に加入する場合と比べて加入要件や保障内容に制限があることが多いです。

妊娠中に医療保険に加入するメリットとデメリットをしっかり理解しておきましょう。

 

<メリット>医療保険に未加入の場合は緊急時の備えになる

医療保険に未加入の場合は、妊娠中でも医療保険に入るメリットは大きいです。

妊娠中でも妊婦検診を通して特に問題が見つからず健康に経過している場合は、一定の期間までであれば入れる医療保険があります。

妊婦特有の疾患や異常分娩のリスクは誰しもが避けられるものではなく、しっかりと備えをしておくことで安心したマタニティライフを送ることができます。

 

<メリット>妊娠中でも加入できる商品が増えている

以前は妊娠中の医療保険への加入は断られることがありましたが、最近では妊娠中でも加入できる医療保険が増えています。

妊娠の経過が順調で妊娠20週目前後までであれば加入できる保険が多く、中には妊娠してから加入する妊婦向け医療保険も登場しています。

商品によって保障内容や保障開始日が異なるため、希望に合った内容であるかを見比べて決めるといいでしょう。

 

<デメリット>加入要件の制限に注意が必要

妊娠中に医療保険に加入する場合、ほとんどの医療保険で加入時期や健康状態などの加入要件に制限があります。

加入時期の制限は商品によって異なりますが、大体妊娠20週前後までの制限がある商品が多く、27週まで加入できる商品もあります。

健康状態では妊娠経過が順調であることが条件に入ります。妊娠経過が順調である状態とは、妊婦検診で子宮筋腫などの異常が見つかっておらず、現時点で帝王切開などの異常分娩の予定がない状態を指します。

また現在妊娠中で過去に帝王切開での出産歴がある場合は、一定期間後は保険加入ができない場合があるため、注意が必要です。

 

<デメリット>保障内容が限られていることが多い

一般的な医療保険では妊娠中に加入した場合、妊婦に多い疾患や子宮周辺部位の疾患、異常分娩が特定部位不担保となることが多くあります。

特定部位不担保とは保険会社によって指定された部位が、保障の対象外となることをいいます。

特定部位不担保には期間が定められており、期間中はその部位にかかる入院や手術などの給付金が支払われません。

妊娠中は子宮に加えて卵巣や卵管などの周辺部位が不担保になり、子宮外妊娠や切迫流産、帝王切開などの異常分娩が保障の対象外となることが多いです。

また妊婦に多い疾患には含まれない子宮筋腫や子宮内膜症などが発見された場合も、特定部位不担保となり、保障を受けることができません。

さらに出産後に再度妊娠をしても不担保期間中であれば、次の妊娠でも保障の対象外となります。

 

妊娠中でも入れると書いてあっても、特定部位不担保条件が付いている場合があります。

加入自体はできたとしても、今回の出産に向けた備えができない場合があるため、保障内容の確認を事前にしっかりしておきましょう。

 

妊娠時こそ保険やお金を見直すチャンス

妊娠・出産は家族の増える嬉しいライフイベント。

安心して出産を迎え、家族が増えた生活を充実させるためにも、早めにお金を備えて計画的に考えることが大切です。

生活の変化に合わせて、必要ならば保険を見直すことも有効な手段です。

ライフプランと必要な保障内容を照らし合わせて、上手に保険を活用しましょう。


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