2021年09月15日 00:00
生後4週に入るまでの新生児の時期は、いろいろなことが手探りです。特に初めて母乳育児に挑戦するママからすると、授乳量が十分なのかと不安に思うことがあるのではないでしょうか。 また、子どもによって母乳や育児用ミルクを飲む量には個人差があるため、2人目以降の出産であっても心配になる場合があるかもしれません。今回は、新生児のミルク量の目安と、授乳のポイントについてご紹介します。
新生児が飲む母乳・育児用ミルクの量はどのくらいの量が目安なのでしょうか。子どもによって出生体重や栄養方法、体の状態には個人差があるため授乳量にも差があります。また、母乳育児を希望している場合、出産後の母乳量には個人差があり、不足分は育児用ミルクで補う場合もあると思います。
授乳方法はママと子どもの体調や環境に合わせて選択することが大切です。次に、母乳または育児用ミルクの場合の一般的な授乳のタイミングをみていきましょう。ご紹介する授乳のタイミングはあくまでも目安です。ママと子どもに合う授乳のタイミングがありますので、いくつか試みてみても不安な場合は医師や助産師などの専門家に相談してみましょう。
新生児は、短い睡眠を何度も繰り返し、一日のうち眠りについている時間が長いです。子どもが起きたときが授乳のタイミング。間隔としては約3時間おきの授乳が目安です。しかし、子どもによって1回に飲める量は違いがあるため、授乳の間隔には個人差があります。
特に、母乳の場合は3時間よりも間隔が短くなることがあるかもしれません。1回の授乳時間の目安は、左右のおっぱいを飲ませた合計で約10~30分。毎回、左右のおっぱいを飲ませます。
一方で、育児用ミルクの場合は母乳よりも消化が緩やかだといわれているため、授乳間隔が3時間以上になる可能性もあります。しかし、時間が空きすぎると1日の授乳量が減ってしまう可能性があるため、最長4時間を目安にして授乳しましょう。母乳で授乳時間が空く場合も同様です。
また、子どもによって泣いてから授乳をすると上手に飲めない場合や、授乳の途中で寝てしまう場合などもあるかもしれません。授乳は子どもの空腹のサインに合わせて行うと良いといわれています。子どもの空腹のサインは以下の通りです。
・おっぱいを吸うように口を動かす
・おっぱいを吸うときのような音を立てる
・手を口に持っていく
・素早く目を動かす
・クーとかハーというような柔らかい声を出す
・むずかる
授乳の間隔が空かなかったり、途中で授乳が終わってしまったりする場合は、子どもの様子に合わせたタイミングで授乳を行ってみるとよいでしょう。
子どもが飲んだ母乳・育児用ミルクが十分かは、体重の増加が一つの目安となります。新生児の時期の体重増加量は1日平均で25~30gが目安です。しかし、体重増加は子どもによって個人差があります。1日の体重増加が30g以上になる場合もあるかもしれません。心配なのは、体重増加が少ない場合です。
「1カ月健診」では、退院時からの1日の平均体重増加が25g未満の場合に、授乳量や回数、授乳時間、排尿排便の回数、子どもの機嫌など、さまざまな要因を把握して授乳量が十分か検討されます。1カ月健診までに授乳量が心配な場合は、自宅などで子どもの体重を測ってみましょう。
新生児の体重測定では、数g単位で測定できる専用の体重計が用いられます。一方で、自宅にある体重計が100g単位で測定できるものの場合も多いかもしれません。自宅で新生児の体重を知りたい場合は、専用の体重計をレンタルなどして用意する方法が一つの選択肢となります。
専用の体重計は体重の増加量を測定できるだけではありません。子どもが飲んだ母乳量を推定するためにも使われます。新生児のころの1回の授乳量は数十gです。母乳を飲ませる前に子どもの体重を測定し、飲んだあとに再度測定した体重増加量で母乳量を知ることができます。
体重増加量のみを知る場合は、必ずしも専用の体重計を用意する必要はありません。例えば1日30gの体重増加があるとすると、1週間では210gの増加が推測できます。100g単位であれば、一般的な体重計でも測定が可能です。ママが子どもを抱っこして体重計に乗り、そのあとに測定したママの体重を引くことで赤ちゃんの体重を知る方法があります。
授乳方法によって新生児の時期の授乳回数は異なります。また、子どもが飲める量が少ない場合は授乳回数が多くなることもあるかもしれません。母乳育児の場合は、ママの状態も授乳回数に影響します。母乳量が十分に増えるまでの期間には、個人差があるためです。
子どもが欲しがるときに授乳をすることで母乳が増えるといわれていますが、「増えていないのではないか」など、心配なことがあるなら専門家に相談することがおすすめです。
次に、育児用ミルクを与える場合の量と授乳回数の目安をみていきましょう。
生まれてから生後7日目ごろまでは、出産した産院で入院をしている時期だと思います。医師や助産師が子どもの状態をみながら、母乳の指導や育児用ミルクの量を決める場合が多いでしょう。
退院してからは、育児用ミルクに記載されている調乳量を目安に与えます。生後2週間までの目安は1回80mlを1日に7回ほどです。授乳量はあくまでも目安であり、子どもが1回に飲める量には個人差があります。授乳後の子どもの機嫌が良いか、排尿や排便の回数に気になる点がないかなどで授乳量を調整することが大切です。
生後2週間から4週間までには、1回につき80~120mlを1日に7回ほど与えるのが目安です。生後2週間までと同様に、この時期の授乳量も目安です。子どもの様子をみながら育児用ミルクの量を調整します。
授乳中に子どもが疲れて寝てしまい、飲み残す場合もあるかもしれません。1回の授乳量が目安量に届かなくても問題はないといわれています。次の授乳時に量を増やしたり、授乳回数を増やしたりして、1日の授乳量を十分に確保していくことが大切です。
母乳を与えながら不足した分を育児用ミルクで補う場合、どのくらいの量を補えば良いのでしょうか。産院に入院中は、母乳を飲ませる前と飲ませたあとに体重を測り、子どもの体重の増え方で飲んだ母乳量を推測することがあります。
自宅で混合栄養を続ける場合は、専用の体重計を用意するのも一つの選択肢です。そのほかは、搾乳をして母乳量を測り不足分を補う方法があります。母乳が足りているか気になったタイミングで搾乳をしてみてはいかがでしょうか。また、入院中にどのくらいの量を足したら良いか、医師や助産師などにアドバイスをもらうのも良いでしょう。
出産後は、ママの体調が十分に回復しないまま、数時間おきの授乳が始まります。家族の協力があっても、睡眠時間が十分に確保できない日もあるはずです。2人目以降の出産でも、子どもによって状態や過ごし方には個人差があるため、授乳量などについて心配なことが出てくることもあるでしょう。。
授乳量が十分か、体重が増えていないなど心配事があったら、出産をした産院での母乳指導、母乳外来のある医院、自治体の保健センターや子育て相談窓口などに相談することができます。
住んでいる地域によって利用できる窓口が異なるため、母子手帳や自治体の広報誌などで確認しておくと安心です。
授乳方法は、ママや子どもの体調、ママの希望など、家庭によってさまざまな選択肢があると思います。選択肢の中で育児用ミルクを取り入れた場合は、ママ以外のパパや祖父母なども授乳を行うことができます。育児用ミルクを使う場合の調乳の方法などをおさらいしておきましょう。
育児用ミルクを飲ませるために、乳首のついた哺乳びんを用意します。哺乳びんは、びんの底まで届くブラシやスポンジに一般的な食器用洗剤を付けて洗い、乳首もよく洗いましょう。水で洗剤を洗い流したあとに、哺乳びんを消毒します。哺乳びんの消毒方法は、煮沸消毒、専用の消毒液を用いた薬液消毒、電子レンジ消毒の3つです。
煮沸消毒をする場合は、哺乳びんと乳首が入る鍋を用意し、たっぷりの水を入れて火に掛けます。沸騰したら哺乳びんと乳首を入れて沈めましょう。煮沸時間の目安は、哺乳びんは約5分、乳首は約3分です。煮沸が終わったら清潔なガーゼやかごなどに並べて乾かします。
専用の消毒液を使う場合は、専用の消毒液やタブレットなどを用意します。説明書に書かれている通りに水を量り、消毒液やタブレットを溶かします。食器用洗剤を使って洗った哺乳びんと乳首を決められた時間浸し、授乳するときに取り出しましょう。メーカーによっては、取り出したまま調乳できるものもあります。
電子レンジ消毒をする場合は、専用のケースを用意します。洗った哺乳びんと乳首を専用ケースに並べ、説明書に記載された時間加熱しましょう。
育児用ミルクを作る前は調乳する場所を消毒し、石けんで手を洗います。鍋や電気ポットなどで湯を沸かし始めましょう。湯を沸かしている間に消毒した哺乳びんに必要な育児用ミルクを入れ、くわえる湯の量を確かめます。
やけどに注意しながら湯を注ぎ入れたら、乳首を取り付け、哺乳びんを軽く回すようにして揺らして育児用ミルクを溶かします。溶け終わったら、哺乳びんに流水をあてるほか、冷水や氷水を入れた容器に浸して人肌くらいの温度まで冷ましましょう。温度の確認は必ず行います。腕の内側に哺乳びんから数滴育児用ミルクを落とし、生温かく感じる程度が目安です。
授乳したあと、子どもが育児用ミルクを飲み残す場合もあるかもしれません。飲み残した育児用ミルクには雑菌が繁殖してしまうため廃棄します。
授乳を母乳のみにしたい場合は、ママの体調はもちろん、子どもの哺乳方法を見直すなど、さまざまな要因が考慮されます。母乳量が十分になるまでの期間には個人差があり、完全母乳になるまで数カ月かかる場合もあるかもしれません。母乳生産量を増やすポイントをみていきましょう。
授乳回数が増えることで母乳の量も増えていくといわれています。まずは、可能な限り授乳回数を増やしていくことが大切です。しかし、子どもが求めず、授乳回数が増えない場合もあるかもしれません。回数が増やせない状況であれば、授乳の合間に搾乳をすることも一つの選択肢です。
授乳回数を増やすことは、ママの負担が大きくなる可能性があります。母乳量の増加にはママの体調も関係があるため、休息をしっかりと取ることも大切です。
母乳の分泌量が十分でも、子どもの姿勢や乳首のくわえ方によって十分に飲めない場合もあります。授乳姿勢の基本は、子どもの口とおへそが同じ方向を向いていること。子どものおへそが上を向き、頭だけおっぱいに向いているような、体がねじれた姿勢は避けましょう。
授乳時の抱き方には、片方の腕で頭を支える「横抱き」、ママの太ももの上に座らせて首と体を支える「縦抱き」、ママのわきの下で抱きかかえる「フットボール抱き」などがあります。抱き方を変えることで、子どもが乳首をくわえやすくなるケースもあるため、授乳の姿勢を見直してみましょう。
子どもの口が大きく開き、乳首を深くくわえさせることでしっかりと飲めるといわれています。また、ママが感じる乳頭への痛みがなくなるともいわれています。以下のようなくわえ方になっている場合は、しっかりと飲めていない可能性があります。
授乳の姿勢が上手くいかない、乳腺炎などのトラブルが起こったなど、母乳育児で心配なことがある場合は、母乳外来などの受診を検討してみるとよいでしょう。
授乳量は子どもによってさまざまですが、体重増加を目安にして、授乳量が足りているかを判断することができます。子どもの体重の増えが悪いことや、増えているけれど授乳方法を見直したいなど心配なことがあるときは、専門家に相談することがおすすめです。相談先は複数あります。不安なことを抱えこまず、解消していきましょう。
<参考>
・授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04250.html
・栄養委員会・新生児委員会による母乳推進プロジェクト報告「小児科医と母乳育児推進」
https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=15
・乳幼児身体発育評価マニュアル
https://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai/hatsuiku/index.files/katsuyou_2021_3R.pdf
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