【助産師監修】妊婦だからこそ温泉でほっこりしたい!リラックスできる入り方と注意点

旅行の楽しみといえば温泉ですよね。広い浴槽の中でゆっくりと手足を伸ばせることができる温泉。妊娠すると身体が疲れやすくなるため、温泉にはいって気分をリフレッシュしたいと思う妊婦さんも多いのではないでしょうか。しかし、ここで気になるのが妊婦は温泉に入っていいのか?という問題です。 今回の記事では、妊婦さんが温泉に入ることの注意点やリラックスできる温泉の入り方ついて助産師が解説していきます。温泉に入るのに適した時期や効果・効能について、また緊急時の対応についても紹介していきますので、温泉旅行を考えている妊婦さんは、ぜひ参考にしてみてくださいね。

妊婦も旅行にいきたい!温泉に入っても大丈夫?

妊娠すると、女性ホルモンの影響によりストレスもたまりがちになり、気分の浮き沈みも激しくなってくるのではないでしょうか。そんな時、気分転換に温泉旅行を計画する妊婦さんもいることでしょう。

結論からいうと、妊婦さんも温泉が温泉に入ること自体は特に問題はありません。むしろ、非常に良い気分転換になるでしょう。気をつけなければいけないのは、温泉の入り方とその時期です。

なんとなく「妊婦は温泉にはいってはいけない」という見方が根付いているのは、戦後に作られた温泉法の影響です。この法律の存在により、妊婦が温泉に入ることは禁忌とされていましたが、2014年の法律改正により、この法律には根拠がないことが示され、改正されました。

現在は妊娠中の温泉は禁忌ではありません。しかし、妊娠することで女性の身体は大きく変化します。温泉に入ること自体の問題よりも、その温泉の入り方で妊婦さんと赤ちゃんに様々な影響があるのです。

温泉が妊婦に与える効果・効能は?

正しい温泉の入り方の前に、温泉が妊婦さんにどのような影響を与えるのか紹介していきます。

リラックス効果が高まる

温泉は、自律神経を整える働きがあります。自律神経には、交感神経と副交感神経がありますが、40~41度程度のぬるめの温度の温泉は、副交感神経を優位にし、リラックス効果を高めます。温泉に入ると「ふー」と声が漏れるのは、この副交感神経が高まりリラックス効果が得られているからなのです。日ごろがちがちに凝り固まった身体が緩んでいくのがわかるのではないでしょうか。

疲れがたまりやすい妊婦さんにとって、いつもと違う環境で、温かい湯船につかりながらほっと一息つく、このシチュエーションは日ごろの疲れをとるために非常に効果的です。

温かいお湯は、身体を緩め、リラックス効果をもたらしてくれます。

身体が温まる

温泉に入ると全身の血流がよくなってきます。妊婦さんはホルモンや姿勢の変化などで冷えを起こしやすい状態です。温泉の温熱効果で手足の先まで血流が流れ身体がポカポカしてくるのを感じてみてください。

腰痛や肩こりが軽減する

温泉に入ることで、腰痛や肩こりのつらい症状を改善することができます。それは温泉に筋肉の緊張をほぐし、和らげる作用があるからです。妊娠中は、姿勢の変化やホルモンの影響によって腰や肩に負担がかかりやすい状態ですので、温泉で凝り固まった筋肉をほぐしてあげましょう。                                            

妊娠中の夫婦ふたりの思い出づくり

 

温泉旅行はリラックスもできるし、妊婦さんの身体に様々な影響があるので、妊娠中の思い出づくりとしては最適です。赤ちゃんが生まれると、しばらくは24時間フル稼働の生活が待っていますので、しばらくゆっくりとした時間はとることができないでしょう。出産や育児に向けて心をひとつにし、協力しあうためにも、赤ちゃんが生まれる前の夫婦ふたりの思い出づくりとして、温泉旅行はいかがでしょうか。

温泉に入るならどの時期が安全?

確かに妊娠中の温泉は問題ないのですが、温泉に入るのに安全な時期、適さない時期があります。

温泉に入るなら妊娠中期がベスト

妊娠中期は、安定期に入りますので赤ちゃんの命綱である胎盤も形成されています。妊娠中に温泉に入るのであれば、つわりが終わって、お腹もそれほど大きくない妊娠中期がベストといえるでしょう。温泉だけではなく、旅行や遠出全般にいえることですが、妊娠期間中で一番体調が安定している妊娠中期に計画するようにしましょう。                                                                      

妊娠初期・後期は避けて

注意すべきは妊娠初期と後期です。妊娠初期は、体調も安定しておらず、一番流産が起こりやすい時期です。温泉に入ると流産するというわけではありませんが、できるだけ刺激にならないように妊娠初期は安静にしておきましょう。

妊娠後期は、お腹が大きくなり、足元が見えづらくなります。脱衣所も濡れていて滑りやすい状態ですので、転倒の危険性が高まるでしょう。また、出産が近づくにつれて出血、お腹の張りの増加が増えるため切迫早産になりやすいことも妊娠後期に温泉を避ける理由のひとつです。

温泉に入る時の注意点・正しい入り方とは

 

温泉は、正しく入浴すれば、妊婦さんにとって非常にいい影響を与えます。しかし、温泉に入るにはいくつかの注意点もあります。

転ばないように注意

脱衣所や浴室の中は濡れており、石鹸や温泉の成分によって非常に滑りやすくなっています。そのため、手すりを持ったり、支えてもらったりなどして、できるだけ転ばないように気をつけましょう。特に露天風呂の場合は、石や段差などで躓きやすい状態です。転んでしまうと、最悪の場合早産や流産に繋がってしまう場合もあるので、ゆっくり行動することを心がけましょう。

ひとりにならないように注意

温泉に入る場合は、絶対にひとりにならないようにしましょう。気分不良や出血、破水など何かあった時にひとりだと、誰も気づかずに対応がおくれてしまうことがあります。何かあったらすぐに助けを求めることができるように、必ず誰かと一緒に入るようにしましょう。

のぼせに注意

温泉内は湯気が立ち込めていて、その湿気や気温、温泉特有の匂いに気分が悪くなることがあります。長湯はせずに、10~15分程度の入浴にとどめておきましょう。気分が悪くなったら無理せずに、すぐに出るようにしてください。

露天風呂の温度差に注意

露天風呂は外にあるためお湯の温度が42度くらいの熱めに設定されています。熱めのお湯は交感神経を刺激し、血管の拡張や血圧の上昇、心拍数の増加をもたらします。寒暖差も激しいため、体調を崩す可能性も高くなりますので、できるだけ室温が一定の屋内の温泉に入るようにしましょう。

入浴するタイミングに注意

入浴するタイミングとして避けなければならないのは、空腹時と満腹時です。空腹時は、低血糖や貧血を起こしやすく、満腹時は消化不良を起こし気分が悪くなる可能性があります。入浴するタイミングとしては、消化が落ち着いたころである食後1~2時間がおすすめです。

脱水症状に注意

妊娠中は、赤ちゃんに必要な栄養素や酸素を送るために、身体の中の循環血液量が増加します。また、赤ちゃんが包み込んでいる羊水も妊娠後期には700~800mlまで増えるため、妊婦さんには妊娠していない時に比べてたくさんの水分が必要となります。温泉で汗をかくと脱水症状を起こしやすくなりので、脱水症状を防ぐためにも入浴前と入浴後は積極的に水分をとるように心がけましょう。

温泉の泉質を事前に調べておこう

温泉にも様々な泉質があることをご存じでしょうか。すべての温泉が妊婦に適しているというわけではありませんので、事前にしっかりと調べておく必要があります。

妊婦に安全な泉質

妊婦におすすめの泉質は単純温泉(単純泉)です。含有量が一定の基準に達していないという泉質で身体への刺激が少ないのが特徴です。妊婦だけではなく、小さな子どもや高齢者、肌がデリケートな方にもおすすめの泉質です。

妊婦が避けるべき泉質

温泉の中には、妊娠中は避けるべき泉質もあるため、事前に確認して温泉にいくことがおすすめです。避けるべき泉質は、以下の4つの泉質です。

・酸性の温泉

・ラジウム温泉

・アルカリ性温泉・

・硫黄泉

酸性の温泉は、角質をはがす作用や殺菌作用が強く、アトピー性皮膚炎などの皮膚病に効果があるといわれています。肌がデリケートな妊婦さんには、非常に刺激が強いため、避けるようにしましょう。

ラジウム温泉は、肌にピリピリとした刺激を与えることがあります。こちらも酸性の温泉と同様肌がデリケートになっている妊婦さんには適しません。

アルカリ性温泉は、ぬるぬるしているという特徴があります。一見肌にもよさそうですが、実はこのお湯により温泉の地面は滑りやすくなっており、足元がよく見えない妊婦さんにとっては転倒の危険性が非常に高いのです。

硫黄泉は、独特な匂いと濁ったお湯が特徴です。湯船内が濁っているため、足元がよく見えずに転倒の可能性があります。また独特な匂いで体調不良を起こすことがあり、避けた方が無難でしょう。

温泉旅行にいくなら緊急時の対応を考えておこう

温泉旅行にいってリラックスしたり、楽しい思い出を作ったりしたいという気持ちは非常によく理解できます。後悔のない、楽しい時間にするために必ず緊急時の対応を考え、事前準備をしっかりと行ってからいくようにしましょう。

母子手帳・健康保険証を携帯しよう

 

温泉旅行ではなくても、出かける時には必ず母子手帳は携帯するようにしましょう。母子手帳には、妊娠の経過や週数、検査結果、赤ちゃんの体重など、安全にマタニティライフを送るための情報がたくさん書かれています。

母子手帳を携帯しておけば、かかりつけ医でなくても情報を共有することができ、すぐに対処することができます。また、お腹がまだ目立たない時期でも、母子手帳があれば妊婦さんだということが一目瞭然でわかります。緊急時の対応がおくれないように、必ず母子手帳は携帯するようにしましょう。健康保険証も病院での診察に必ず必要になってきますので、母子手帳とセットで持ち歩くようにしましょう。

宿泊するなら妊婦であることを伝えよう

妊娠中は体調の変化が起こりやすく、何が起こるかわかりません。旅行中に破水したり、出血したり、陣痛が始まったりすることももちろん考えられます。宿泊する場合は、宿に妊婦であるということを伝えて、何かあったら対応してもらいやすいようにしておくことをおすすめします。旅行情報の中には、妊婦さんに優しい温泉宿の特集などもありますので、チェックしてみてください。

近くの産婦人科を調べておこう

温泉にいく際は、出先の産婦人科を必ず調べておくようにしてください。できれば片道2時間以上かかるところはおすすめできません。余裕のないスケジュールをたてることもやめておきましょう。拠点となる宿からどこに産婦人科があるのか調べておき、何かあったらすぐに受診できるようにしておくとよいでしょう。また、個人病院であれば他院の患者さんは診てくれないことがあります。近くの救急センターや総合病院もチェックしておくことをおすすめします。

体調に異変を感じたら無理せずに!

温泉旅行中は何もないにこしたことはありませんが、もし、何かあった時のために慌てないよう、しっかりと事前準備をしておくことは大切です。妊娠中に切迫早産などの診断が下っている場合はもちろん温泉などはいくべきではありません。体調がよくても、直前にお腹の張りが増えた、つわりがぶり返してきているような気がするなど、何か少しでも体調に異変を感じているのであれば、赤ちゃんのことを一番に考え温泉旅行を見合わせる対応を検討しましょう。

まとめ

日ごろ疲れやすい妊婦だからこそ、温泉でほっこりしてリラックスしたいですよね。

妊娠中期に入れば体調も安定していますので、温泉にいくことは問題ありません。

緊急時に備えてしっかりと事前準備を行い、正しい入浴方法を守って楽しい温泉旅行にしましょう。


ライター:秋元祥世

プロフィール
福岡県出身。麻生看護専門学校を卒業後、福岡県立大学看護学部に編入。助産師、保健師国家資格取得。助産師として総合周産期センター等で病棟や外来に約10年勤務する。その後、赤ちゃん専門のフォトグラファーの資格を取得。3人の男の子の子育てをしながら地域でベビーサロン&フォトスタジオHugComeを開業。
行政による子育てサロン運営も行っており、地域でママ達が楽しく育児ができるように育児相談やサポート、イベント企画をおこなっている。


あわせて読みたい

関連リンク:赤ちゃんのお風呂や沐浴で必要なバスタオル。フード付き、ガーゼ素材などおすすめ5選