【看護師監修】妊娠中にインフルエンザの予防接種は受けるべき?

妊娠中はそれまで気にならなかったことも、気になるようになります。それは食事だけではなく、自分に使う物すべてが対象になることも珍しくありません。代表的な物は内服薬ですが、妊娠している時期によってはインフルエンザの予防接種も気になることの1つです。ここでは、妊娠中にインフルエンザの予防接種を受けるべきか解説します。

妊娠中にインフルエンザに感染すると重症化しやすい

妊娠中の特徴は、妊娠していない時と比べると免疫力が低下していることです。そのため、妊娠中にインフルエンザに感染すると重症化しやすいことが知られています。さらに、全妊娠期の中でも特に妊娠後期になると、重症化のリスクが高くなります。

 

理由は、大きくなったお腹が肺を圧迫して、肺に十分に血液がいかないからです。これによって肺炎になりやすく、重症化のリスクが高いと言われています。インフルエンザに感染していなくても呼吸をしづらいと感じる期間ですが、肺炎になるとさらに呼吸しづらくなります。

 

インフルエンザは気を付けていても感染してしまうことも。「インフルエンザに感染したかな?」と思ったら、かかりつけの産婦人科を受診して検査を受けましょう。受診する前に産婦人科に電話をして、どのように受診をしたらいいのか確認することが大切です。

 

インフルエンザの検査が陽性という結果がでたら、処方された薬を医師の指示通りに使用しましょう。発症から48時間以内に使用することでウイルスが排出される量が減ったり、発熱の期間を短くしたりすることが可能です。発症から48時間以上経過した妊婦さんは、重症化率が高かったという結果があります。

 

また、インフルエンザに感染すると赤ちゃんへの影響も気になるところ。現在、インフルエンザによる赤ちゃんへの影響は報告がありません。しかし、妊娠初期の高熱は赤ちゃんの臓器形成に何かしらの影響があると言われています。そのため、妊娠初期でインフルエンザに感染した場合や高熱が出たら、自己判断せずに早急に産婦人科を受診しましょう。

 

家族が感染したら、マスクをして可能な限り同室を避けたり、食器を共有しないなどの対策が必要です。妊婦さんに症状が出ていなくても、抗インフルエンザ薬を予防的に使用することができます。感染しているか心配なときは、産婦人科に相談することが大切です。

 

 

接種可能な時期

インフルエンザに感染しないためにはマスク・手洗い・十分な休息などの他に、ワクチンを接種することです。インフルエンザワクチンは生ワクチンではなく、不活化ワクチンという死滅したウイルスが入っています。そのため、妊婦さんが接種をしても問題ありません。

 

ワクチンは接種をしてから、2~3週間程度で効力が出て4~5ヶ月は継続します。接種したらすぐに効力はでないため、インフルエンザが流行する前の10月~11月には接種することがおすすめです。

 

また、妊娠期間ではどのタイミングで接種をしても問題ありません。妊娠初期に接種しても抗体は出産まで維持され、赤ちゃんにも同じように保たれます。もし、妊娠後期に接種するなら、出産予定日の3~4週間前までには接種を終了することが理想です。

 

もし、妊娠中に接種ができなかったときは、産後の1ヶ月検診で問題がなければ接種することができます。ただし、出産後の接種は出産に関連した発熱がでることもあるため、副反応かそうではないかを見極めてもらうことが必要です。

 

 

妊娠中でも接種できる

妊婦さんがインフルエンザワクチンを接種するメリットは、妊婦さん自身に抗体ができるだけではなく、胎盤を通して赤ちゃんにも抗体ができることです。そして、赤ちゃん自身は、生後半年までは抗体を持ち続けます。

 

注意点は、生後半年未満の赤ちゃんは予防接種を受けることができないこと。予防接種ができない間でも抗体を持ち続けるためにも、妊娠中に妊婦さんが接種することはとても大きなメリットと言えます。

 

ただし、インフルエンザのワクチンを接種しても100%予防できません。接種していることでインフルエンザの症状を軽くすることができ、症状が軽く済むこともあります。そのため、妊婦さんだけではなく家族も接種することが大切です。

 

また、ワクチンには防腐剤が含まれていますが、妊婦さんや赤ちゃんへの影響の報告はありません。それでも気になる場合は、接種をする病院の医師に相談をしましょう。

 授乳中でも可能

授乳中に接種をしても問題ありません。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンのため、母乳を飲んだ赤ちゃんにも影響は出ません。ただし、授乳は必ず赤ちゃんと密着します。そのときに、せきやくしゃみをしないようにしましょう。

 

インフルエンザにかかっても授乳しなければいない状況になることも。そのときは、手洗い・マスク・清潔な服で授乳するなどの対策を取ることも大切です。直接、授乳することに抵抗があれば搾乳をし、家族に哺乳瓶であげてもらうことも方法の1つです。対策は以下を参考にしてください。

①石けんで手をしっかりと洗う

➁せきやくしゃみなどをしないように気をつけ、不織布マスクをつけて授乳すること。もし、授乳中にせきやくしゃみなどが出る場合は、不織布マスクをしていても赤ちゃんにかからないように注意すること

③インフルエンザで体調が辛く授乳ができない場合は、搾乳した母乳を家族に与えてもらう

 

全身症状やアナフィラキシーショックがなければ卵アレルギーでも可能

卵アレルギーがあっても、全身症状やアナフィラキシーショックを起こしたことがなければ、予防接種を受けることは可能です。インフルエンザワクチンを製造していく過程で、わずかに卵の成分が残ってしまいます。

 

たくさんの卵の成分が残るわけではありませんが、稀に卵アレルギーの副作用が起こることも。最近のワクチンは精度が高いため、ほとんど問題になりません。そのため、普段、卵が入った食品を食べることができていれば接種することは可能です。

 

 

重篤な卵アレルギーの方は接種できない

日常的に卵が含まれている食品を避けていたり、卵自体を避けている方はワクチンの接種はせずに下記の方法を行いましょう。

  • バランスのいい食事
  • しっかりと休息をとる
  • マスクの着用
  • 手洗い
  • 手指のアルコール消毒
  • 部屋の湿度を一定に保つ
  • 定期的に部屋の換気をする
  • 水分を意識して摂る  など

 

インフルエンザだけではなく体調を崩さないためにも、日常生活の中で予防に繋がることを実施することも大切です。そして、感染した場合は受診したり、自宅でできる対応を実施しましょう。

  • 発熱したら、48時間以内に抗インフルエンザ薬を使用する
  • インフルエンザに感染した方と接触した場合は、予防で抗インフルエンザ薬を内服する
  • 脱水にならないように水分をとる
  • 食べられる物を少しずつ食べる
  • 熱が上がり切ったら体を冷やす など

 

また、場合によっては接種できることもあるため、どうしても接種がしたい場合は主治医に相談をしましょう。

 

インフルエンザにかかったときの対応方法

気を付けていてもインフルエンザにかかってしまうことも。妊娠中に体調を崩すと自分だけの体ではないため、いろいろ心配になりますよね。そこで、妊娠中にインフルエンザにかかった場合の対応方法をご紹介します。

 

ここで紹介すること以外も気になることやわからないことなどがあれば、かかりつけの産婦人科に相談しましょう。

 

地元の病院に受診しよう

まずは受診しましょう。このとき、産婦人科に受診するのであれば、事前に電話で体調を伝えて指示を得ることが大切です。産婦人科は病気の方がいるわけではありません。妊婦さんや小さな子どももいるため、体調不良の状態で行くと感染を広げてしまう可能性があるからです。

 

産婦人科に電話をして、他の診療科に受診するように指示があれば産婦人科以外のかかりつけに受診しましょう。持ち物は保険証・診察券・母子手帳。母子手帳を持って行く理由は、妊娠の経過を伝えやすかったり、体調が悪くなったときすぐに対応できたりするためです。

 

妊娠前までは受診しなくても、自力で体調不良を克服したという方もいるのではないでしょうか。妊娠中に体調を崩した場合は、必ず受診しましょう。インフルエンザをそのままにしておくと長引くだけではなく、肺炎になったり早産になったりすることがあります。

 

また、通常の風邪は受診しなくても治るという方もいますが、細菌感染になると症状が長引くだけではなく、重症化することもゼロではありません。妊娠中に感染すると赤ちゃんに影響する感染症もあります。

 

妊娠中は病院に受診することに対して消極的になりがちですが、赤ちゃんのことを思って受診しましょう。

 

妊娠中でも内服できる

内服するタイミングは、発症から48時間以内です。高熱・関節痛・だるさなど、普通の風邪よりは症状が強いため、受診して検査をしてもらいましょう。また、内服することに抵抗がある場合は、不安や疑問をしっかりと主治医に伝えて安心してから使うことも大切です。

 

もし、発症から48時間以上経っていても、一度は産婦人科を受診して使用できる薬を処方してもらいましょう。ただし、アマンタジンは催奇形性があるため、妊婦さんには使用しません。

 

内服しても赤ちゃんへの影響はほとんどない

妊娠中でもインフルエンザの薬は使用できます。インフルエンザに使用する抗インフルエンザ薬(タミフル・リレンザ・イナビルなど)は妊婦さんはもちろん、赤ちゃんへも影響はないと報告されています。

 

タミフルは内服薬タイプ。妊娠初期の妊婦さんが使用しても、薬などの影響を受けていない先天異常発生率は3%よりも発生率が低かったと報告されています。リレンザやイナビルは吸入薬タイプです。どちらを使用しても妊婦さんの血液中にはわずかに残るのみ。そのため、妊娠中に使用しても問題ありません。どの薬も用法・用量を守って正しく使用しましょう。

 

それぞれの特徴を参考にしてください。

  • タミフル

5日間、連続で内服する。粉薬とカプセルのどちらかを使用。基本的に誰にでも使用するが、10歳~20歳未満と腎臓病がある方には使用しない。

  • イナビル

吸入して使用する薬。一回吸入するだけで、内服は終了する。

  • リレンザ

こちらも吸入タイプ。粉状の吸入薬は息をおもいっきり吸込むと同時に、薬も吸込むことがポイント。5日間の服用で終了する。ただし、喘息や乳製品に対するアレルギーがある方は主治医に伝えることを忘れないこと。

 

授乳はできる

内服しても授乳はできます。まず、インフルエンザに感染した状態では、母乳を通して赤ちゃんに感染しないかと気になる方もいるでしょう。インフルエンザウイルスは、血液では繁殖しません。母乳は血液からできているため、母乳を通して感染することは考えにくいといえます。

 

また、抗インフルエンザ薬を使用すると母乳に微量の薬剤が含まれるため、薬剤の説明書に授乳中は避けるように記載されています。しかし、授乳中であっても内服することは学会も推奨しているため、主治医とよく相談をして納得して使用するようにしましょう。

 

まとめ

妊娠中はそれまで気にならなかったことが気になってしまいます。病気にならないために、または、症状を軽くするために受ける予防接種。インフルエンザの予防接種は妊娠中であっても使用できます。また、インフルエンザになった場合は適切な治療を受けることが大切です。疑問や不安があれば主治医にしっかりと確認をし、納得してワクチンも治療薬も使用しましょう。


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