【看護師監修】ワクチン接種後に妊娠はできるの?妊活への影響は?

新型コロナウイルスが流行している中、国内外でワクチン接種が推奨されています。妊活中の人や妊婦にとってはワクチンが妊娠や胎児に影響するのか心配になりますよね。そこで、今回はワクチン接種と妊娠に関する今現在報告されている情報をまとめました。妊活中を行っている人は、ワクチン接種の検討に役立ててみてください。

ワクチンの種類

ワクチンは体の免疫システムを利用して、ある病原体の抗体(病原体が悪さをしないように働く物質)が生成されるようにします。ワクチンの種類は多くありますが、どのような物質を注入するかにより区分されます。それぞれの種類について詳しく見ていきましょう。

不活化ワクチン

不活化ワクチンは病原体やウイルスが感染力の弱い状態になったものが原材料となるワクチンです。インフルエンザやB型肝炎、肺炎球菌、日本脳炎のワクチンは不活化ワクチンで、数回に分けて打ちます。

生ワクチン

生ワクチンは病原体の毒性を弱めた(弱毒化した)物質が原料となっているワクチンです。BCG(結核)や麻疹、風疹、水痘、ロタウイルスなどが該当します。摂取回数は少なく1.2回ほどで、十分な免疫がつくまでには1カ月ほどかかると言われています。

mRNAワクチン

mRNAワクチンは病原体の遺伝子情報が含まれたものが原材料となります。遺伝子情報を取り組んだ体内の細胞は病原体のスパイクタンパク質を作り出し、これに対する抗体を生成し病原体に対しての抵抗力をつけるワクチンです。新型コロナウイルスのワクチンである、ファイザー製やモデルナ製が該当します。

ウイルスベクターワクチン

ウイルスベクターワクチンはmRNAワクチンと似ていますが、遺伝子情報を乗せ人体に無害のウイルスを投与するワクチンです。病原体の遺伝子情報が入ったウイルスに対する抗体を生成し、病原体が体内に侵入した時に攻撃するという仕組みを期待するものです。新型コロナウイルスのワクチンであるアストラゼネカが該当します。

ワクチンが推奨される理由

国内では2021年2月からワクチン接種が開始されましたが、副反応に対する不安もささやかれています。ワクチンが推奨されるのは副反応のデメリットよりもメリットがはるかに上回るとされているからです。その具体的な理由を説明していきます。

新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすい

新型コロナウイルスに感染した人の中で重症化しやすいと言われているのが、高齢者や基礎疾患のある人、一部の妊娠後期の人です。また妊娠中の人は、重症化しやすい上に早産になりやすくなるとも言われています。

重症化しやすい理由として妊娠後期は妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの合併症を起こしやすいこと、お腹が大きくなり横隔膜が圧迫され呼吸しづらくなり呼吸困難症状が出やすいことなどです。また、新型コロナウイルスに感染すると、頻繁な咳の症状により腹部への負担がかかり、お腹が張りやすくなり早期の破水などが早産につながってしまいます。

新型コロナウイルス感染症が流行拡大している

最近は新型コロナウイルスの変種株(デルタ株など)により感染勢力が強くなっていることも、接種を推奨するひとつの理由となります。特に住んでいる地域の人口に比べて感染者の割合が高い地域においては、接種の検討がすすめられているようです。

日本全国において、一度クラスターが発生すると新型コロナウイルス感染者が一気に増え、更に多くの人が感染する可能性が高くなります。そのため、多くの人に一気に感染するのを阻止するためにワクチン接種が必要とされています。

効果が期待できる

厚生労働省の情報によると、ワクチンを接種することにより新型コロナウイルス感染症の発症予防、重症化の予防が可能と言われています。海外で行われたワクチン接種者と非接種者の新型コロナの発症率を比較した研究では、ワクチンを接種した人の方が新型コロナ感染症の発症率が低く、ワクチンは90%以上の効果があったとされています。更にワクチンを2回打った人のほうが効果が高かったことが示されています。※1

妊活中のワクチン接種について

厚生労働省の情報によると、妊活中でもワクチン接種は可能であるためどんどん推奨されています。ワクチンが妊娠や胎児への影響について報告されている内容や、妊活へどのように影響していくのでしょうか。

妊活中でもワクチン接種ができる理由

妊活中にワクチンの接種が可能な理由としては以下の3点となります。

・妊娠への影響は報告されていない

・胎児への影響は報告されていない

・ワクチン接種後と接種前の異常の差がない

 

国内外の研究報告によると、妊娠に悪影響するという明らかな証拠がないと言われています。mRNAワクチン接種後に体のどこの部位に行きわたるのか調べた研究では、一部肝臓や脾臓までには行きますが、卵子が育つ卵巣までにはほとんど行かないということがわかりました。※1 また、CDC(米国疾病予防管理センター)にて、ワクチン接種前後で精子の活動性や量に変化は見られなかったと報告されています。※2 このような結果から、ワクチン自体が生殖器へ悪影響は考えにくいことがわかります。

妊娠に気づかないままワクチン接種をし、その後に妊娠がわかった人を含めて、ワクチン接種後にも自然妊娠している人もいるという結果※3から、妊娠への悪影響は極めて少ないと判断されています。

さらに、ワクチンを接種したあと、奇形や胎児の発育不全、新生児死亡などの問題は起きた事例はなく、胎児への影響はないとわかりました。※3むしろコロナワクチンを接種した母親に抗体ができると胎盤を介して胎児にも抗体が届けられ、新生児の新型コロナウイルス感染症からの予防にもつながることが期待されています。※4

妊娠後の流産率についてもワクチン接種前のデータとの差がないことが明らかになって※5おり、ワクチンが流産などに直接関係しているとは言えないようです。

このようにワクチンが妊活に影響を与えることは考えにくいということから、ワクチン接種が推奨される理由となっています。

ワクチン接種を控えたい時期

現在までの研究では胎児への影響がほぼないことが明らかにされているため、妊活中はいつでも接種することができます。しかし、ワクチンを接種すると腕がだるかったり、発熱したりなどの副反応が起こることも報告されているため、ホルモン剤を打つ期間や生理中など、体調を崩しやすい時には接種を避けるといいかもしれません。

ワクチンと体調不良が重なり、更に体調管理が難しくなることもあり得るためです。基本的にいつでも接種できますが、自身の体調や主治医と相談しながら、接種するタイミングを考慮するのが一番良い方法でしょう。

妊活中のワクチン接種で覚えておきたいこと

ワクチンが妊娠に関する生殖機能に影響がないこと、胎児への奇形や発育不全などの影響は与えないなど報告されている結果は、ひとつの指標として判断されています。ワクチン接種を開始してから、今もなお研究は行われ続けており、ワクチンの完璧な安全性を示すものではないということを覚えておきましょう。長期的な結果については今後注目する必要があります。

より安全にワクチン接種を行うために

大切な命を迎えるため、安全第一で行動すると安心へと繋がります。では、ワクチンを安全に接種するためにはどのような行動が必要なのでしょうか。

妊活中ならではの疑問点を解決し安全にワクチンを接種できるポイントを説明します。

できるだけ妊娠前に接種する

妊娠中、新型コロナウイルスに感染すると重症化や早産の心配があるので、できるだけ妊娠前に接種することがすすめられています。胎児への先天性異常が起きる可能性は低いと言われていますが、研究は進行中であり対象件数が少ないので完璧に安全とは言えないのが現状です。もし不安な方は胎児の臓器が作られる時期の妊娠初期にかぶらないようにワクチンを接種すると良いでしょう。

パートナーも接種する

パートナーが新型コロナウイルスに感染すると妊婦さんも感染する確率は高くなります。そのため、予防接種はパートナーも一緒に接種することが大切です。新型コロナウイルスに限らずインフルエンザなどの感染症も同様です。予防接種を受ける場合は、パートナーも一緒に受け、感染予防に努めましょう。

副反応の対応方法

ワクチンの副反応として、接種部位の痛みや発熱、頭痛、筋肉痛、体のだるさなどが生じる場合があります。発熱は接種後1~2日目に起こることが多いので、もし発熱が長引く場合や症状が重く辛い場合は受診する必要があります。ワクチン接種後、発熱や痛みに関してはアセトアミノフェン系の解熱鎮痛剤が推奨されています。

アセトアミノフェン系は妊婦にも使える鎮痛剤です。その他に非ステロイド性抗炎症薬(ロキソニン、イブプロフェンなど)がありますが、これらは胎児への影響があるので必ず鎮痛剤の種類を確認しましょう。市販のアセトアミノフェンを使用しても問題ないですが、心配な場合はワクチン接種した際にあらかじめ医師に処方してもらうのも良い方法かもしれません。

接種後の避妊について

新型コロナウイルスのワクチンは生殖器や妊娠への影響はほぼないと報告されていることから、避妊を行う必要はないです。明らかに発熱があったり体調が整わなかったり辛い時に無理な性行為は行わない方が良いですが、ワクチン接種によって制限されることはありません。生ワクチンの場合は2カ月ほど避妊が必要ですが、mRNAワクチンの場合、避妊の必要はないと言われています。

接種後も感染対策を徹底しよう

ワクチンを接種してからも基本的な感染対策は必要になります。予防接種は1回目、2回目を接種後、1週間後経過すると予防効果が高まると言われているので、予防接種を打った直後はまだ完璧に抗体ができていません。つまりワクチン接種後でも抗体ができるまでは感染のリスクがあるため、手洗い、マスク着用、社会的距離を置くなどの感染対策が必要になってくるのです。ワクチンが100%感染症を予防できるわけではないので、流行している今は感染対策を怠らないことが一番の予防策になります。

まとめ

国内外で、妊娠を計画している人から妊婦までワクチン接種を積極的に行うように推奨されています。妊婦の場合、新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいこと、早産になりやすいなどの報告もありました。ワクチンの妊活への影響も懸念されていましたが、悪影響を及ぼすことがほとんどないことがわかってきているため、安心できますね。不安なことを不安のままにせず正しい情報を得て、ワクチン接種を考慮してみましょう。

 

出典:

※1 厚生労働省 第40回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年6月23日)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00256.html

資料5-1現在の新型コロナワクチンの感染予防効果のエビデンス

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000796742.pdf

※2 アメリカ疾病予防管理センター(CDC) COVID-19 Vaccines for People Who Would Like to Have a Baby

COVID-19 Vaccines for People Who Would Like to Have a Baby | CDC

※3 ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(The New England Journal of Medicine)  Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2104983

※4 American Journal of Obstetrics and Gynecology

Coronavirus disease 2019 vaccine response in pregnant and lactating women: a cohort study

https://www.ajog.org/article/S0002-9378(21)00187-3/fulltext

※5 ネイチャー(Nature) Are COVID-19 vaccines safe in pregnancy?

https://www.nature.com/articles/s41577-021-00525-y

※6 厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬を飲んでもよいですか。

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0007.html

※7 厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A ワクチンを接種することで不妊になるというのは本当ですか。

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0086.html

※8 厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A ワクチン接種後に新型コロナウイルスに感染することはありますか。

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0016.html


こちらもcheck!

【看護師監修】妊娠中にインフルエンザの予防接種は受けるべき?

妊婦さんに知ってほしい話~妊娠中の薬との付き合い方~